大人に代わって家族の世話や介護、家事などを担う子ども・ヤングケアラーについて子ども世代にも知ってもらおうと、苫小牧市は「ヤングケアラーって何だろう?」と題したリーフレットを作成した。ヤングケアラーの実態や当事者が抱える悩み、相談先などを掲載しており、学校を通じて中学生に配布する。さらに北海道ヤングケアラーサポートセンター(江別市)の協力で中学校向けの出前授業の検討も進めている。
リーフレットはA3判三つ折り、全面カラー。7000枚印刷し、今年度は中学2、3年生に配布する。来年度以降は毎年、中学2年生に配る予定。
体調の悪い母に代わり、きょうだいの世話や炊事で自分の時間がなくなったことにつらさを感じている女子高校生が、学校の教員に気持ちを打ち明けたことで家事や育児支援につながった―という事例を漫画で紹介。年齢に合わない重過ぎる責任や負担は勉強や友人関係、健康面にも影響を及ぼすとして、「自分の気持ちを言葉にしよう」「自分を大切にして」というメッセージとともに、市こども相談課や同サポートセンターなどの相談窓口を紹介している。
同課はリーフレットの配布と合わせ、道内各地の中・高校などでの授業経験が豊富な同サポートセンターの加藤高一郎さんを講師に招いた出前授業も検討中だ。その足がかりとして10月25日、啓明中学校で3年生130人を対象とした授業を初めて実施した。
加藤さんは自身が出会ったヤングケアラーとのエピソードを紹介しながら、「家族ケアは悪いことではないが、頑張り過ぎてしまうのが問題」と説明。「人間は絶対に1人では生きられない。大変なことになったら周りの人に話してほしい」と呼び掛けた。
授業を聞いた多くの生徒が「ヤングケアラー」という言葉は知っていたが、大久保皇輝さん(15)は「具体的にどんなことをしているのか初めて知った」と話した。杉美波さん(同)も「もし家のことで悩んでいる友達がいたら、どう関わればいいのかを学べてよかった」と語った。
同課の齋藤健巳課長は「子どもたちへの啓発活動は、未来に向けた安心の種まきのようなもの。今後もさまざまな手だてを検討していきたい」と語った。