公正取引委員会は27日、中小企業が賃上げしやすい環境整備の一環として、コストの上昇分を発注元の大企業に価格転嫁できているか調べた緊急調査結果を発表した。原材料価格や人件費の高騰に直面する下請け企業との間で、協議しないまま取引価格を据え置いていたとして、佐川急便、全国農業協同組合連合会(全農)、デンソー、豊田自動織機など13社・団体を公表し、改善を要請した。
公取委は今回の調査で独禁法違反や下請法違反とは認定していないが、事業者名を公表する異例の措置に踏み切り、価格転嫁のための協議を促すことにした。
緊急調査は、中小企業が賃上げ原資を確保できる環境を整える政府の施策の一環。6月から12月にかけ、受注者約8万社と発注者約3万社を対象に書面調査を行い、一部で立ち入り調査も実施した。
調査の結果、13社以外でも、値上げ協議に応じないなど、独禁法が禁止する「優越的地位の乱用」として問題となる恐れのある行為が認められた発注者が4030社あり、公取委は注意喚起の文書を送付した。
公取委は2月、労務費や原材料・エネルギーコストの上昇分反映を求める価格転嫁を巡り、優越的地位の乱用として問題となる恐れがあるケースを明確化した。具体例として、発注者が(1)協議せず価格を据え置く(2)値上げを求められても理由を書面で回答せず価格を据え置く―ことを挙げた。
調査では、(2)の行為は(1)より少なかった。受注者が取引の縮小や停止を恐れ、値上げを言い出せずにいる可能性がある。