5

14(火)

胆振の
明日の天気

晴れ 朝晩 くもり

16 / 9

主要

自衛隊に個人情報リスト提供 苫小牧市が自衛官募集で

2015/8/8配信

 苫小牧市が2011~14年度にかけて、自衛隊の自衛官募集のために住民基本台帳に記載されている18歳を迎える男女の個人情報(住基情報)をリスト化し、提供していたことが8日までに分かった。4年間のリスト掲載者数は6698人に上る。市は法的に問題ないとの判断で続けてきたが、15年度は閲覧にとどめ、リスト提供を取りやめている。道内の人口10万人以上の主要9市で、過去にリストの提供(貸し出し含む)をした自治体は、苫小牧を入れて3市だけ。専門家は「公的機関の間でも、個人情報の扱いは慎重であるべき」と指摘する。

 自衛官募集については自衛隊法および施行令で、自治体が事務の一部を担ったり、防衛大臣が必要な資料を自治体に求めることができるようになっている。

 市住民課は自衛官募集業務の一環として、自衛隊の依頼で住民基本台帳から、高校卒業予定者を含めた18歳を迎える男女の住所、氏名を抽出したリストを作成。11年度から提供していた。

 リスト掲載者数は11年度が1720人、12年度は1670人、13年度は1657人、14年度は1651人だった。

 昨年秋の国会で、自治体から自衛隊への個人情報提供が問題となり、総務省は今年3月末、住民基本台帳の適正利用を求める文書を全国の自治体に通知。これを受け、市は15年度のリスト提供を取りやめている。

 住民基本台帳は原則、正当な理由があれば閲覧できる。市のリスト提供の経緯について文書による記録はないが、担当者は「自衛隊法や施行令に基づく判断だと思う」と説明。市個人情報保護条例は政令等に基づく場合や国など公的機関には外部提供も例外的に認めている。

 本紙調査によると、道内主要9自治体の中で、自衛隊にリスト提供していたのは苫小牧、北見、江別の3市。このうち、北見市は自衛官採用の用途以外に使わないことを明記した誓約書の提出を受けており、リスト貸し出しという形を取っていた江別市もコピーやカメラ撮影などはしないことを書面で約束させ、使用が済み次第、速やかにリストを返却させていた。

 苫小牧市だけが、個人情報の利用制限を文書で取り交わしていなかった。

 15年度からはこの3市を含め全9市が閲覧にとどめ、その場で書き取りを認める対応を取った。苫小牧市市民生活部の片原雄司部長はリスト提供について「自衛隊法などに基づいており問題はないと考えていた。総務省の通知で住基台帳の取り扱いは『閲覧が望ましい』との見解が示されたため、今後は閲覧で対応。必要な情報はその場で転記してもらう」とした。

 今年度、自衛隊札幌地方協力本部苫小牧出張所は5月中旬~下旬の数日間、苫小牧市役所に出向き、住基台帳から18歳と20歳の男女の氏名、住所など約2200件を書き写した。担当者は「自衛官募集案内を直接訪問して説明するのに活用している。それ以外の利用はない」と強調する。

 個人情報の扱いに詳しい憲法学者の西原博史早稲田大学教授は「リスト提供は義務ではなく、典型的な目的外の使用に当たる。(提供先が)国であっても大丈夫なのかと適正に判断できる仕組みが必要」と強調。「情報を行政機関に預けている市民側には第三者への個人情報提供について知る権利がある」と指摘している。
紙面ビューアー
ニュースカレンダー

週間ランキング

集計期間 05/07 〜 05/14

受付

苫小牧民報社から

クリップ保存しました
マイページへ
クリップ削除しました
マイページへ
会員登録するとクリップ登録機能が使えます。
詳しくはこちら