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災害派遣の記録 陸自第7師団-胆振東部地震から1年

(1)人命救助(上) 力ずくでの救出劇 土砂に流された住宅から助け求める声

2019/9/6配信

第7偵察隊(東千歳)・酒井祐介2曹(43)

 2018年9月6日午前6時ごろ、東千歳駐屯地を小型車両で出発した。行き先は厚真町吉野地区。地震による甚大な土砂災害を受け、派遣する大型車両が通行できるかを確認する「偵察」が任務だった。道路が地割れなどであちこち寸断する中、状況をつぶさに調べながら前進した。

 厚真に入って橋梁(きょうりょう)を調べているさなか、住民が「うちの地区もひどい。来てほしい」と助けを求めてきた。市街地から吉野へは逆方向の幌里。先行する部隊をはじめ、警察、消防が続々と吉野に向かう中、松田徹雄1曹(45)と「人命救助が優先」と幌里を進んだ。

 目に飛び込んできたのは土砂で100メートルは押し流された2階建て住宅。1階はつぶれてぐしゃぐしゃ、離れた所に屋根が見えた。「おーい、誰かいますか」。懸命に声を張り上げながら探すと、屋根の下辺りから「おーい」とかすかに男性の声。わずか2人で立ち向かう救出劇が始まった。

 屋根の除去は全て手作業。土砂で変形した部分から、革手袋をはいた両手で、力ずくでへし折った。隙間ができると屋根の下に体を潜り込ませ、肩に乗せるようにして何度も、何度も揺すった。時間にして40分近く。屋根に直径3メートル程度の穴を開け、作業できる足場を確保した。

 それでも男性の姿は見えなかった。柱やはりが入り乱れるように覆い、家の中をひっくり返したようだった。無数のがれきを取り除いていくうち、枝切り用のこぎりが見付かった。刃だけだったが先端を柄に見立て、少しずつ柱などを切断していった。2メートル半ほど下に男性が見えてきた。

 男性は奇跡的に生じた空間にはまる形で無事だった。首や肩が木材などに挟まり、身動きこそ取れなかったが、会話もできた。「大丈夫かい、今出してあげるから」。声を掛けて励ましながら作業を続けた。水筒の水をタオルに染み込ませ、手を伸ばして差し入れて男性に飲ませた。

 夏を思わせる残暑の中、後続の応援はなかなか到着せず、「2人でやるしかない」と作業し続けた。男性への負荷が増さないよう、取り除く柱などを慎重に見極め、てこの要領で補強して隙間を広げた。作業開始から約4時間。無事に救出したが、男性から「弟もいる」と告げられた。

 自衛隊、警察、消防が続々と応援に駆け付けたことで、本来任務の経路偵察に戻ったが、日暮れに偵察を終えると再び捜索に参加。「少しでも早く見つけてあげたい」。その一心で土砂のスコップ掘りなどにも夜通し加わった。疲れを感じる余裕もないまま翌日まで活動を続けた。

 捜索の初動から生存者の救出、遺体の発見と、人命救助のあらゆる厳しい場面に立ち合ったが「普段やっている訓練は間違いがない、ということを実感した」ときっぱり。国防を担うための訓練で培ったノウハウ、鍛え上げた気力や体力、あふれる使命感を総動員して任務を完遂した。

      ◇

 甚大な被害をもたらした昨年9月6日の胆振東部地震。最大震度7を記録した厚真をはじめ、安平、むかわの胆振東部3町を中心に、陸海空の自衛隊約2万5000人が対処した。中でも主力を形成したのが地元の陸自第7師団(司令部・東千歳駐屯地)。人命救助、民生支援などを被災地に寄り添いながら展開した。隊員がどんな思いでどのように活動したか、地震から1年を機に話を聞いて記録に残す。全10回。

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