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(7)料理で地域の魅力発信 厚真町のシジマカフェ店主・北條佳苗さん

2019/1/15配信

 山に囲まれた景観や納屋をベースに作った郷愁漂う建物、地元の野菜を使った料理などが評判となり道内各地から客が集まっていたがあの日以降、扉は固く閉ざされ、訪れる人はいない。

 厚真町幌内のシジマカフェ。体調不良に悩んでいた20代半ば、苫小牧市から同町郊外に移住した。療養しながら2016年10月、自宅敷地内にヨガスタジオとカフェをオープン。充実した毎日を送っていたが昨年9月の胆振東部地震で自宅が全壊し、店も半壊。避難生活を余儀なくされた。

 震災直後は町を出ることも頭をよぎったが、病気でどん底だった自分を救ってくれた場所。離れることがどうしてもできず、キッチンを搭載した移動販売車で町産野菜を活用した料理を町内外で提供することを決意した。料理を通じて地域の魅力を発信することが、今の自分にできる精いっぱいの町への恩返しだと思っている。

 苫小牧市出身。高校を卒業後、市内の企業に就職したが26歳の時に体調が悪化。アレルギー症状や脱毛症に苦しんだ。心も病み、家から出られない日々が続いた。健康を取り戻したい一心で、自然豊かな厚真に28歳で移住。パートナーの男性と無肥料・無農薬の野菜作りに励み、収穫した野菜を中心とした食生活を続ける中で徐々に症状は改善していた。生活が落ち着き始めると経験、技能を生かした仕事をしたいと考えるようになり、自宅納屋の1階でカフェ、2階でヨガスタジオを開業した。

 地場産野菜をたっぷり使った料理を次々と生み出し、常連客も定着してきた矢先、大地震に見舞われた。自宅前の山が崩れ、目の前まで土砂が迫ってきた。自宅は基礎が大きく沈み込んで住み続けるのは困難。苫小牧の実家や厚真町内の避難所に身を寄せた後、昨年12月6日、本郷地区の仮設住宅に入った。

◇   ◇

 失意の避難所生活を送る中、知人の協力を得て、苫小牧市内で開かれたイベントに参加。自慢の料理を提供する機会があった。もともとカフェメニューとして開発したものだったがイベント客に喜ばれているのを目の当たりにし、手応えを感じた。店を離れても自分にできることはある―と。

 オープンから2年たたずして遭遇した大災害に何度も心が折れそうになった。店の片付けをしていても、太陽が沈んで暗くなると地震の恐怖が脳裏をよぎった。心臓が痛くなるほど胸がどきどきした。

 くじけそうになる心を支え、再び歩みだす力をくれたのは、病気で苦しんだ経験。原因不明の体調不良に悩んだ過去が野菜をふんだんに使った料理の開発に取り組むきっかけとなり、さらにはカフェやヨガスタジオのオープンにつながった。この苦しみもいつかきっと役立つ日が来る。そう考えると未来が明るく、光り輝くものになると思えてくる。

 当面は、カフェで人気を集めた料理や新たに考案した商品を町内外で地道に移動販売していきたい考え。そしていつか、厚真の自然を感じられるようなカフェやヨガスタジオを必ず再建させようと心に誓っている。

(姉歯百合子)

=おわり=

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