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前へ-胆振東部地震被災地の人々

(1)酪農で地域復興を 牛を手放した仲間の分まで-安平町の牧場経営・金川幹夫さん(57)

2019/1/7配信

 広い牛舎の中、散らばった牧草を牛が食べやすいようにスコップで寄せながら毛艶や乳房の張り具合を見る。「よし、きょうも元気だ」

 安平町早来富岡の金川牧場。のどかに過ごしている牛を眺めていると、4カ月前の胆振東部地震が遠い昔の出来事のように感じる。町内を襲った震度6強の地震は経営に大打撃をもたらした。牧場の規模拡大構想も振り出しに戻ったがこの地で酪農業を続けることに迷いはない。

 早来生まれ。酪農業を営む両親の背中を見て育つうち自然と酪農家を目指すようになっていた。苫小牧東高校を出て酪農学園大学(江別市)を卒業。カナダで酪農を学んだ後、20代で牧場経営に携わった。5年ほど前に創業者である父から経営を引き継ぎ、2代目社長に就任。生き物を相手にする仕事の奥深さや、酪農家を目指す若手の育成にやりがいを感じる日々を送る中、地震に見舞われた。

 大きな揺れで牛舎の一部が損壊し、停電で搾乳設備や子牛の哺乳機械が使えなくなった。断水で人も牛も飲み水が不足。川の水をくんだり、給水所で確保した水を沸騰させ、子牛に与えるミルク用の水を作ったりと手を尽くしたが牛の鳴き声がやむことはなく、地震発生の翌日に出産した牛は脱水の影響で死亡した。水不足で搾乳機の洗浄もできないため、搾った生乳はすべて廃棄処分せざるを得なかった。

 電気、水道の復旧後も「後継者がおらず多額の費用を投じて設備を修理しても将来性がない」などと、近隣で4戸の酪農家が廃業を決めた。地域産業の衰退が人口流出をさらに加速させるのでは―と危機感が募る。

◇    ◇

 酪農業振興へ長年、思い描いてきた構想がある。牛の飼料となるデントコーンを町内の農家に栽培してもらい、自分たちが購入。地元の飼料で育てた牛で生乳を供給する中で、地域経済に好循環を生み出す耕畜連携の仕組みだ。現在飼育している牛は約480頭。もっと増やして飼料の需要を増やすことが構想実現の鍵と考え、搾乳ロボットの導入などで牧場規模の拡大計画を練っていた。しかし、壊れた牛舎の建て替えなどで想定していなかった多額の修繕費が発生。地震直後は、突き付けられた厳しい現実に目の前が真っ暗になった。それでも「こんな時だからこそ何としてでも構想を実現させ、酪農業界としても地域の復興に貢献したい」と強く思うようになった。

 気持ちを奮い立たせてくれたのは、危機的な状況を一緒に乗り切った家族や従業員との絆、酪農業に関心を示し、後を継ぎたいと言ってくれている息子の存在。そして、地震で廃業を余儀なくされた近隣の酪農家の姿だ。悔しさをにじませながら牛を手放した仲間の分まで、頑張らなければならないと感じている。

 まずは牛舎の建て直しなど復旧作業に着手し、拡大計画はそれから。牧場が元通りになるまでにどれほどの歳月がかかるかは分からないが、息子と共に構想を練ることも将来の楽しみになりつつある。

(姉歯百合子)



 道内で初めて震度7を観測した昨年9月6日未明の胆振東部地震から4カ月がたった。逆境をばねに前へ進もうとする東胆振の人たちを紹介する。7回連載。

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