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神谷さん作「ウルトラマン『正義の哲学』」が文庫に

2015/3/30配信

 苫小牧市内で教員を務める傍ら、執筆活動なども行っている神谷和宏さん(41)の著書「ウルトラマンと『正義』の話をしよう」(2011年、朝日新聞出版)が、文庫本になった。テレビ放送されていた「ウルトラ」シリーズが描く「真実の正義」を解き明かす著作。神谷さんは「簡単に善悪の判断を下すことができない複雑で多様な現実や、当時の日本の社会問題がウルトラマンには描かれている」と魅力を語る。

 怪獣が悪で、ヒーローが善。そんな単純なものだろうか―。「ウルトラ」シリーズを教材に中学生に授業をしているとして注目を集め、現在も怪獣やポップカルチャー、教育などの研究を行っている神谷教諭。11年に出版した著書が「ウルトラマン『正義の哲学』」とタイトルを変え、このほど文庫化された。

 ウルトラシリーズには「対立し合う正義や善悪、優劣のジャッジが容易ではない複雑な状況が描かれている」という神谷さん。例えば、ウルトラマン第23話「故郷は地球」では、ヒーローが人間を殺すという衝撃的な内容の回があった。

 宇宙で遭難した宇宙飛行士が怪獣へと姿を変え、自分を見捨てた人間へ復讐にやってくるというストーリー。ウルトラマンは地球の平和を守るために、宇宙開発の犠牲者である怪獣ジャミラを倒すことしかできなかった。

 人類に進歩をもたらす宇宙開発だが、事故をきっかけに一人の人間をやむを得ず殺さなければならなかった。ウルトラシリーズでは急速に近代化、合理化、科学化が進む日本社会の「光」と「闇」の部分も同時に描かれているという。

 「メディア作品には時代が内包する諸問題が映し出される」。「例えばピカソの『ゲルニカ』は、戦争という時代背景がなければ描かれなかった」と強調し、ウルトラマンの中にも「日本の高度成長期、バブル期などの背景があり、作品の世界観につながっている」と語る。

 テレビや映画、漫画など「あらゆるメディアの背景にはさまざまな情報が隠されている」。情報過多な時代の中で、「適切に社会や情報を読み解くヒントとなる一冊になれば」―。

 ▽神谷和宏(かみや・かずひろ) 1973年、苫小牧市生まれ。駒大苫小牧高校、駒沢大学(東京)文学部国文学科卒業。「ウルトラ」シリーズ研究のほか、社会批評や教育論、ポップカルチャー論なども手掛ける。
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