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愛されて創業1世紀 錦町の第一洋食店100周年

2019/7/5配信

 苫小牧市錦町の第一洋食店が8月10日、創業100周年を迎える。道内屈指の歴史を持つ洋食店で、看板メニューのビーフシチューやミートコロッケなどこだわりの料理に舌鼓を打った客の中には、著名な文化人も多数。3代目店主の山下明さん(71)は「これまでたくさんの人に支えられてきた」と感謝する。

 創業者で、明さんの祖父に当たる故・十治郎さんは山梨県の農家に生まれた。西洋料理のコックを志し横浜市内のホテルで修行を始め、明治後期に来道。札幌市の豊平館でフランス料理を振る舞った。

 1911年には当時の皇太子で後の大正天皇が行啓した際、宿泊した同館で調理を担当し道内巡幸にも同行。王子製紙苫小牧工場の迎賓館勤務を経て、同市本町で19年8月10日、苫小牧で最初の洋食店として第一洋食店をオープンさせた。珍しさもあり繁盛したが21年5月、繁華街だった同町周辺を焼いたコイノボリ大火により類焼。27年の昭和金融恐慌の際は1カ月客が来ないこともあったという。

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 市道駅前本通沿いの現在の店は、2代目の故・正さんが53年8月に移転オープンした築65年の建物。移転当時は周囲に明かりがなく、ネオンを取り付けていた。70年代後半に大型店進出が相次ぎ、商店街を訪れる客は徐々に減ったが、同店の味を求める親子連れなどの根強いファンに支えられた。店内は昭和時代にタイムスリップしたかのような味わい深いシックで落ち着いた雰囲気。シャンデリアや深みのある強いだいだい色のテーブル、いすが目を引く。

 正さんはさまざまな文化人と交流があり、歌人の斎藤茂吉、画家の山下清、落語家立川談志らも来店。店のロゴやメニュー表のデザインは、型絵染めで人間国宝の芹沢銈介が手掛けた。店には版画家の川上澄生、遠藤ミマン、原精一などの美術品も所蔵されている。

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 創業以来、変わらない味というビーフシチューは、2週間以上かけて赤ワインで仕込む茶系のデミグラスソースのマイルドな味わいが売り。看板料理の一つである「クロケット」と呼ばれるジャガイモを使わないコロッケは、欧州向けの味で当初は常連客にも受け入れられずメニューから除外した時期もあったが、30年ほど前、明さんが「本場・フランスの味を届けたい」と復活させた。

 大学時代、歌手の小田和正さんも所属した混声合唱団でソリストとして活躍した明さんは店内のBGMに大好きなオペラを採用。バイオリンやピアノの演奏者を迎えたライブも企画するなど、音楽関係者の来店も多い。

 妻の澄子さんと二人三脚で店を切り盛りする明さんは「時代が進むにつれ、時間に追われ、ランチに時間をかける人が少なくなった」と回顧。今後については「あまり長く(店を)続けるつもりはないが、周囲の声にも耳を傾けて考えていきたい」と話す。

 市美術博物館は13日から9月16日まで、同館展示室で特別展「第一洋食店の100年と苫小牧」を開く。さまざまな芸術家が集い、文化サロンとしての役割も担ってきた同店が所蔵する作品や資料を公開し、店の歩みを紹介する。担当学芸員の武田正哉さんは「店の歴史をひもときながら地域の歴史、独自に育まれてきた文化を市民に伝えられれば」と話す。

 8月10日には、同館主催のランチ会を同店で開催。明さんが20年来のコンビというピアニストの井内京子さんとクラシック音楽を披露し、大正時代から伝わる料理と共に楽しむ。

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