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ピアノの高齢者レッスン再開 難病にまけず前向きに-恵庭・遠藤さん

2019/8/14配信

 難病障害の先天性二分脊椎症を抱える恵庭市恵み野西在住のピアニスト遠藤深香(みか)さん(57)が指導活動の幅を広げようと準備中だ。病気に負けず前向きに練習して恵庭で指導者となり、日本障害者ピアノ指導者研修会北海道支部長を務めた経歴がある。しばらく生徒は募集していなかったが、高齢者に気軽に音楽を楽しんでもらうためのピアノ教室を今後開き、「これまで自分を助けてくれた社会への恩返しをしたい」と考えている。

 遠藤さんは富良野生まれ札幌育ち。先天性二分脊椎症は、さまざまな神経障害を引き起こす病気で、遠藤さんの場合は股関節より下の部位がまひ。車椅子や松葉づえでの生活を余儀なくされ、「短命」と言われていたこともある。

 中学時代にフランス人歌手に憧れて始めたピアノ。「障害を持っていても、一芸を身に付ければ社会に認知される」という当時の先生の言葉を信じ、「演奏に自分の価値を見いだした」。体が動かない苦しみも音楽が癒やしてくれた。

 幼少から青春時代を振り返る遠藤さんは「周囲の人に恵まれたおかげか、嫌な思いはあまりしていないかも。もう突っ走るしかなかったし、つらかったのはディスコにいけなかったことくらい」と笑い、悲壮感は漂わせない。

 しかし、病気の影響はピアノ演奏にのし掛かる。脚の感覚が無く、残響音などのペダル操作に支障が出るからだ。遠藤さんは感覚の残る下腹部、股関節周辺の筋肉を使い、「てこの原理のように」膝、足首などの関節に力を伝えてペダルを操作。工夫に工夫を重ねて音楽表現を磨き、演奏は評価されるようになる。

 高校卒業後、神奈川県の昭和音楽短大ピアノ科に入学。体にハンディキャップの無い人と同じ土俵で2年間競うことになった。

 忘れられない思い出は、1年生の時に体調を崩した中で臨み、演奏を失敗した試験。担当の教員は周囲から「足も悪いし、大目に見て点数をつけてあげたら」と提案されたが「それは頑張っている遠藤さんに失礼です」ときっぱり断り、厳正に採点。遠藤さんは後になってそれを知り、胸が熱くなったという。

 卒業試験で固く調整されたペダルをうまく踏み込めず、後ろにずれていく椅子を直しながらの演奏になるが、成績は上位だった。

 短大卒業後は札幌市内の企業で働き、家族の転居に伴って1989年から恵庭市内でピアノ教室を開く。専門学校の保育科で講師を務めるほか、バイオリン奏者とのデュオを結成し、島松仲町の夢創館のプレオープンイベント(99年)などで演奏。活動の幅をどんどん広げる。

 障害者の音楽家を応援するため、2004年には日本障害者ピアノ指導者研究会北海道支部の立ち上げに尽力。支部長として、自分の経験を生かしながら障害に応じた演奏の仕方を工夫したほか、自身は国連本部の「障害者の日」に参加し、カーネギーホールでも演奏。道内でも大谷音大の講堂、時計台などでもコンサートを催し、多くの障害者に演奏の舞台を提供した。

 ただ同支部長勇退後となる11年に体調を崩してからは、入退院も多くなり、自身のピアノ教室の募集をやめることに。音楽、病気などこれまでの人生を振り返り、「終活」に入ろうとしたが、親、先生、音楽仲間、友人―など支えてくれた人の存在を再確認して「まだやり残したことがある」と思った。

 現在、高齢者向けのピアノ教室を準備中だ。両親の高齢化などに向き合う中で介護予防の大切さを知り発案した取り組み。「演奏は脳の活性化に生きることも多い。高齢の方が幾つになっても元気に充実した日々を過ごせる一助になりたい」と言う。教室で教える曲の一つとして考えている「エリーゼのために」を実際に弾いて見せる遠藤さん。柔らかな旋律に希望を込め、指が鍵盤の上で踊った。

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