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歌川広重と東海道五拾三次を歩く-苫小牧市美術博物館特別展より

(5)鞠子(静岡県静岡市駿河区)

2018/8/8配信

 鞠子(まりこ)宿は東海道で最も小さな宿場であった。とろろ汁が名物で、わらぶき屋根の茶店の看板には「名ぶつとろヽ汁」とある。沿道の梅は白い花を付けており、松尾芭蕉の「梅若葉まりこの宿のとろろ汁」という句に着想を得た情景であることがうかがえる。茶店には2人連れの旅人が床几(しょうぎ)に腰掛け、正面向きの男は名物のとろろ汁を食べているようだ。軒先には焼き魚の串を差した巻わらや干し柿がつり下がっており、これらが客に供される場面を連想させる。

 この絵における、広重の着想の源は十辺舎一九(じっぺんしゃいっく)の「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」であろうか。そこには弥次郎兵衛と喜多八が鞠子でとろろ汁を注文するエピソードが見られる。絵の中の2人連れは滑稽な弥次喜多道中を思わせる。

 ただし、広重は主役の2人のほかに、坂道を上る後ろ姿の男を配置している。この男が見る者の視線を左に導くことにより、空間が茶店で完結せず、画面の外まで広がっていく感じが生まれている。主役とは無縁な人物を配して臨場感を高めるのは、保永堂版東海道の常とう手段であった。

 一方、丸清版では深々と降り続く雪が主題。細く続いていく宿場と道が、画面上から降り続く雪の中に溶け込んでいくかのような美しい雪景色を描いている。

(苫小牧市美術博物館学芸員 武田正哉)

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