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歌川広重と東海道五拾三次を歩く-苫小牧市美術博物館特別展より

(6)四日市(三重県四日市市)

2018/8/9配信

 保永堂版は三重川のほとりに吹く風がアシや柳の枝を揺らしている様子を描く。川に架かる簡素な橋の上では2人の旅人が歩み去っていく。右は風を含み大きく膨らんだかっぱを押さえた人物。左の男はかさを飛ばされ、体を前に傾け必死に手を伸ばす。中央の柳の木の枝を揺らす様子も風を感じさせ、心細さを募らせる演出効果を高めている。

 平凡な風景を鑑賞に堪える図とするために、広重が用いたのは、登場人物が互いに歩み去っていく運動感によって、旅を物寂しく描く手法だといえる。人と人との擦れ違いの瞬間を捉えた構図は「蒲原(かんばら)」や「庄野(しょうの)」でも見られ、絵に広がりと動きを生み出している。

 一方、丸清版は風情ある宿場の様子を描いている。四日市宿は伊勢神宮への参詣路と分岐し、繁華な港町であったという。ここではまんじゅう屋で憩う人々の姿と共に、お伊勢参りの犬が描かれている。江戸時代後期、旅ができない人に代わって、犬にお金を持たせて「お伊勢参り」を頼み、参拝させてお札をもらうことが流行した。今は失われた当時の習俗を知ることができるのも、このシリーズの魅力だ。

 色が鮮やかで描写が細やか、情報量が多い丸清版は、手元で見るのにふさわしい作品。これに対して保永堂版は引いて見る作品といえよう。

(苫小牧市美術博物館学芸員 武田正哉)

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