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守れるか ついの住み家-自立支援関連施設の火災から

(下)行政や消防、対応に苦慮

2018/3/7配信

 1月31日に起きた火災で、入居者11人が死亡した札幌市東区の生活困窮者向け共同住宅「そしあるハイム」。要介護状態の高齢者も居住していたことから老人福祉法上の有料老人ホームに当たるのでは―との指摘もあったが札幌市は火災後の調査で、同法や社会福祉法など現行法で位置付けられている福祉施設には当てはまらないと結論付けた。入居者に高齢者や障害者を含む場合であっても共同住宅については法律上の位置付けがあいまいで、安全管理が立ち遅れている実情が浮き彫りとなった。

 行政も生活困窮者が集まる共同住宅の実態把握に苦慮している。生活保護の申請や受給に関わっている苫小牧市生活支援室の担当者は「生活保護の受給者が暮らす共同住宅が市内に点在していると認識はしているが、現時点でどの住宅がどのような運営状況にあるのかまではつかみ切れていない」と語る。

 消防法に基づき、建物の調査や指導を行う市消防本部の担当者も「建物の用途変更の届け出をしていない共同住宅がある」と打ち明ける。消防法では建物の用途に応じた必要な消防設備の設置基準を定めており、届け出時点から用途を変えた場合は変更手続きが必要となる。しかし、変更の手続きを怠り、届け出と実際の建物の運用が異なる共同住宅も存在する。「そしあるハイム」の火災を受け、市消防本部が2月に市内の共同住宅8カ所で行った特別査察でも一部に用途変更手続きの不備が見つかった。市消防本部の担当者は「相談や手続きをしてくれれば、必要な消防設備を伝えることができるのだが」と頭を抱える。

   ■    ■

 生活困窮者が多く入居する共同住宅での火災が全国で相次いでいることを重く見た国も対策に乗り出した。厚生労働省は今国会に生活保護法などの改正案を提出。生活保護費受給者やホームレスなどの生活困窮者に無料、安価で住まいを提供する「無料低額宿泊所」の定義を明確化して実態把握を促し、防火体制の規制強化を進める考えだ。

 早稲田大学教授で日本火災学会会長の長谷見雄二さんは「高齢者や障害者は特に災害に弱いので、施設の管理者が安全対策を取るのは当然」とした上で、「運営側は防火設備を整備したくても、実際には資金面で難しいこともある。(生活困窮者支援の観点からも)、行政による補助金制度を手厚くすべき」と説く。

 東京都は一部の無料低額宿泊施設のスプリンクラーの設置費用を負担しているが、市町村単位で独自の補助事業を展開するには財政面での困難も。市総合福祉課の力山義雄課長は「市の単独での補助事業は現時点では検討すらできないほど難しい。国や道の何らかの働き掛けがあれば、すぐに検討に入れるのだが」と話す。

 一方、さまざまな事情を抱える人たちが安心して暮らすためには防火設備などハード面に加え、地域と行政が一体となった見守りが不可欠との指摘も。福祉住環境など建築学が専門の明治大学の園田眞理子教授は「生活困窮者が多く入居する共同住宅に日頃から気を配り、何か異変を感じた際には(入居者などへの)声掛けも重要」と述べる。

 苫小牧市元町の一時生活支援施設「ワーカーズもとまち」の責任者松本賢二さんもこれまでは、あまり施設と地域との連携を意識したことがなかったが、札幌の火災をきっかけに、住まいの安全のためには地域の理解と協力が大切だと感じた。「どんな状況下でも安心して暮らせるようにするには、制度の充実や施設整備はもちろんだが、困窮者が地域の中で孤立しないことが最も重要なのかもしれない」。松本さんは、実感を込めて語った。

 ※この企画は報道部・姉歯百合子、八重樫智記者が担当しました

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