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守れるか ついの住み家-自立支援関連施設の火災から

(上)生活困窮者「ここに住めて救われた」

2018/3/5配信

 「ここは、現代のうば捨て山みたいなものかもね」。苫小牧市内東部の共同住宅。経営者の50代の男性は食堂に置かれたテレビに目を向けたまま、自嘲気味に語った。

 築40年ほどの建物を用いたこの共同住宅には15人が入居。約半数の8人が精神疾患や認知症、貧困などによって何らかの福祉的支援を必要としている人たちだ。

 もともとは長期出張などで一時的に滞在する人向けに運営していたが、2年ほど前から生活保護や年金で生活する人の入居が急増。光熱費込みで3万円という家賃の安さに加え、身寄りがないため入居契約の保証人を付けることができない人や安定収入を得られない人など、一般のアパートでは入居を断られてしまうようなケースでも受け入れてきた。それがいつしか生活困窮者の救いとなっていた。

 「私もここに住むことができて救われた1人だよ」。食堂の片隅で茶を飲んでいた高齢女性が語りだした。70代のこの女性は昨年春に入居。以前は市内の高齢者下宿に住んでいたが、年金のほぼすべてが下宿代と医療費に消えて手元にお金が残らない生活を送っていたという。

 家賃が低いアパートに移りたくても年齢や病気を理由に新たな賃貸契約を結ぶことは難しく、病状の悪化に比例して生活の苦しさが増した。その中で出合った新たな住み家。家賃が安くなり生活が少し楽になったが、それ以上に住民同士がいたわり合う姿に心が癒やされた。「他のみんなが家族みたいに接してくれて、寂しくなくなった。最期までここに住みたい」とほほ笑む。

■   ■

 1月31日に生活困窮者支援を目的とした、札幌市東区の共同住宅「そしあるハイム」で火災があり、入居者11人が死亡したことを受け、さまざまな事情を抱える人が身を寄せ合って暮らす低額の共同住宅がにわかに注目を集めている。同時に、生活困窮者や障害者、高齢者などが暮らす共同住宅の防火体制の在り方が問われることとなった。

 苫小牧の共同住宅の男性経営者も「うちは集中暖房なので大丈夫だと思っていたが火災の恐ろしさを目の当たりにし、やはり対策を練らなければ―と痛感した」と言う。この共同住宅では一部の部屋でポータブル石油ストーブを使用。全部屋に火災報知器を設置しているが、自動火災報知機やスプリンクラーは付いていない。男性は「今のストーブよりも安全な暖房器具に更新することを検討している。10万円ほど掛かるが、この場所を守るためには必要な投資」と話す。一方で「制度の網目から落ちてしまった人が暮らす場所の安全確保は誰が責任を担うべきなのだろうか」と疑問も口にした。

 市内中心部の共同住宅を運営する女性も「以前、消防の立ち入り検査を受けてスプリンクラーを付けた方がいいと助言を受けた。でも、すぐに資金を調達するのは難しくどうしたらいいか迷っている」と明かす。この共同住宅は木造の一軒家を活用し、現在7人が入居。つえを使わないと歩行もままならない高齢者もいる。

 札幌での火災を受け、共同住宅への規制が強まらないか、不安視する声も。精神障害を抱えて働くことができず、数年前から共同住宅で暮らすという30代男性は「もし法規制が強まって防火設備の強化が必要になったら、この共同住宅はやっていけるのだろうか。ここがなくなったら、自分の行き場所はなくなる」と声を沈ませた。



 札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で11人の入居者が犠牲となった1月31日の火災から約1カ月がたった。生活困窮者の「最後のとりで」となっている民間の共同住宅には高齢者や障害者も暮らすが、法的位置付けの難しさから安全確保の問題が潜む。困窮者支援の現状と課題を探った。

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