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土地と人と-地域創造への挑戦

(4)木彫り熊と民芸品―人々の記憶と記録

2019/8/9配信

 白老町を舞台にした「ウイマム文化芸術プロジェクト」(文化庁、実行委員会主催)に携わる私たちは、町内各所で9月から始まる複数の企画を仕込み中である。白老町で飛生アートコミュニティーの活動に関わって10年ほどになるが、こんなにもたくさんの地域住民とお会いしている年は初めてかもしれない。

 企画の一つに「木彫り熊」に関するプロジェクトがある。木彫り熊にどうにかして光を当てたいと考えるきっかけがあった。去年の秋、町内の奥地にひっそりとたたずむ、とある1軒の廃屋を訪れた際、この家の天井裏に見渡す限り一面に積み重なった木彫り熊があった。色付け前の未完成の熊、毛彫り途中の熊、熊の面、熊、熊、熊。おそらく300体は超える熊たち。その圧倒的な光景に私はすぐに言葉が出ないほど、とにかく驚いた。それがプロジェクトの発端となった。

 熊をじっくり眺めていくうちに、その手仕事の作業工程や造形の丁寧さ、荒さを含めて、完成までに関わった人々のことを想像する。いろんな熊に会いたくなり、同時に木彫り熊に関わって来た人々の生の声を聞きたくなった。現在、町内外の有志メンバーで、1軒ずつ聞き取り調査を積み重ねているが、この活動がどんどん面白くなっている。白老の木彫り熊の黎明(れいめい)期と言える昭和10~20年代(1935~54年)、隆盛を極める昭和30~50年代(55~84年)の数多くのエピソードを聞き重ねていくと、当時の時代背景や観光客が押し寄せる町の活況、その空気感、彫り師たちの生活背景、軒を連ねてひしめき合う民芸品店の仕事風景が立ち上がってくる。

 和人、アイヌ、障がいがある人、流れ者、毛彫り専門の女性たち、孤高な彫り師、売り子、大卸業者、運送専門の人…。地域内外のたくさんの人々が、木彫り熊や民芸品に関わり、共に町の一大産業を築いた時代。その記憶、思い出、その匂いは人々の中にしっかりと息づいている。当時の第一線の彫り師たちの多くは既に亡くなられている現状を知り、人々のこの記憶を価値ある地域文化財と捉え、この活動が後世に残していくための記録づくりでもありたいと願っている。

 9月に「白老の木彫り熊とその考察展」と題して仙台藩白老元陣屋資料館をメイン会場に展覧会を計画している。単に木彫り熊をコレクションした展示ではなく、人々の匂いや当時の雰囲気が伝わる展覧会づくりを目指している。

 (文化芸術事業プロデューサー・木野哲也)

 ※「土地と人と」は毎月第2・第4金曜日に掲載します。

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