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令和に輝け-千歳・恵庭

(5)亡き師の教え胸に刻む 民族の思いや意味、理解すること大切

2019/7/6配信

アイヌ文化伝承者・佐々木翔太さん

 カムイチェプ(サケ)は、追ってはいけない。感謝の気持ちを持ちつつ心を無にする。「捕ろうと思うと捕れません。でも感謝の気持ちを込めると頂けます」。やがて目に止まった1匹を伝統漁具「マレク」で突く。先端でサケが身をよじらせる―。

 2018年12月、マレク漁が千歳川で解禁された。期間や場所などの制限はあったが、かつてアイヌ民族が主食の一つとしたサケ漁が復活した。「先人たちは自然に遡上(そじょう)してきたサケを頂いていた。同じことをできたのが単純にうれしかった」。伝統を担う者として、意義をかみしめる。

      ◇

 父方の祖母がアイヌ民族。幼い頃から祖母のいとこである文化伝承者の中本ムツ子さん=11年11月死去、83歳=のアイヌ語教室に通い、伝統の踊りも教わった。秋に遡上したサケを迎えるアシリチェプノミでマレクを握った。サケを捕るのも、踊るのも楽しかった。

 差別を受けたことはない。「周囲で伝承活動に関わっている人がいない」ことから、思春期特有の心情ゆえに中学生時代は活動に積極的ではない時期も。高校入学後、共に学んだ同い年の仲間が活動をやめたことで「『(活動を)自分がやらないといけない』という気持ちに。重圧でやめたいと思うことも何度もありました」と振り返る。

 それでもやめなかったのは、高校2年で中本さん、3年の終わりに祖母が亡くなったから。「せっかくの文化が途絶えてしまう。ここで投げ出したら中本さんが悲しむ」。継承への思いを強くした。



 札幌大学に入学し、アイヌ民族の学生向けの教育活動を展開するウレシパクラブに所属したが、体調を崩して3年春で中退。「アイヌ文化は座学で学ぶものではない。本を読むより、エカシ(おじいさん)やフチ(おばあさん)と話した方が学ぶことがある」との思いも。在学中から、千歳での伝承活動に深く関わっていた北原次郎太北大准教授に千歳の祭祀(さいし)と作法を学んだ。

 2月に68歳で亡くなった、伝承者の野本久栄さんからも教えを受けた。「とにかく口うるさい人でした」と苦笑い。カムイノミ(儀式)のため祭壇を設ける時も、イナウ(御幣)の立て方や角度、幅などを細かく指摘された。「祭壇自体がカムイ(神)なんだ。格好良く立てないといけない」と話した野本さん。「僕が分かっていることでも何度も教えてくれる。いま思うと期待されていたと思う。尊敬しています」と目を細める。

 踊りも中途半端な完成度や気持ちを込めない踊りは許されなかった。「自分も教える立場になって、野本さんの思いがよく分かります。中途半端な状態で踊ってはいけない。踊りはカムイに見てもらうためのもの。踊りの意味も理解しないと」。千歳に伝わるアイヌ文化を継承すべく、亡き師の数々の教えと意味を胸に刻む。



 現在は小学2年生から22歳までの5人に、伝統文化を教える立場になった。「彼らには、僕から学んだことを『下の世代に教えなさい』と伝えています。僕の後をついてくるだけではなく、人に教えると自分の知識の再認識にもつながる。厳しくしています」と話すその表情は、兄のような思いやりにあふれている。

 年下の世代には自分が子供の頃と同じように、アイヌ文化に楽しく触れてほしい。「でも儀式や踊りに込められた民族の思いや意味について理解することが大切。それをしっかり教えたい。アイヌ文化は素晴らしいと伝えたいです」。

 先人からアイヌ民族の心を受け継いだ青年は、次代への継承をも見据えている。

(平沖崇徳)

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