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岩倉丸の針路-苫小牧市長4期目の航海

(下)協働のまちづくりへ

2018/7/27配信

 苫小牧市が展開してきた「大作戦」シリーズは、岩倉市政の特徴とも言える取り組みだ。向こう1年間のテーマを掲げ、市民や事業所を巻き込んだ協働のまちづくりを進める施策。岩倉博文市長が初当選翌年の2007年に始めたごみ減量とリサイクル推進の「053(ゼロごみ)大作戦」を皮切りに、これまでに「健康」「ふくし」「みなと」「スポーツ」のテーマを掲げ、10回にわたって繰り広げた。

 まちづくりは行政だけで担うのでなく、住民や企業も共に力を合わせて実現させていく―。そうした協働の精神を広げたいとの思いが、今では岩倉市政の代名詞ともなった「大作戦」を生んだのだろう。

 だが、当初は職員の間で「一過性のパフォーマンスで終わるのでは」と冷ややかな見方もあった。「最初は本当に困った。何をどうしたらよいのか、と悩んだよ」。大作戦に関わった市のある幹部OBも事業化の苦労を振り返った。特に、大作戦のコンセプトの一つ「まちぐるみ」をどう実現するか頭を抱えたものの、「結果的に行政と市民の距離感が縮まり、職員の意識も変わるきっかけになったと思う」と語った。

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 大作戦シリーズの中で複数回実施したのが「053大作戦」と「ふくし大作戦」の二つだ。岩倉市長は9日の4期目初登庁の際の記者会見で早々、ごみ、ふくしを再びテーマに掲げた大作戦を任期中に展開していく考えを示し、協働のまちづくりへの思い入れの深さを見せた。

 これまでの取り組みで一定の成果も出ている。07、09、12、15年の計4回行った053大作戦では、ごみのリサイクル率が飛躍的に向上する効果を生んだ。苫小牧のリサイクル率は06年度に11・2%と全道平均を下回る状況だったが、大作戦を通じた啓発活動などにより、14年度は28・2%へ上昇。道内主要都市の中で初めてトップとなり、15、16、17年度は3年連続で30%台とトップレベルを維持。リサイクル率の高さは他市からも注目を集めている。

 市民啓発による分別意識の広がりで、ごみ減量も進んだ。その結果、焼却処理は沼ノ端クリーンセンターの1施設だけで対応できるようになり、市は18年度から糸井清掃センターの廃炉作業に入った。老朽化した糸井清掃センターを建て替えた場合、市の試算で50億~60億円にも上るが、現状のごみ量をキープできれば施設更新の必要はなくなる。大作戦と銘打ったまちぐるみ運動の力の大きさを物語っている。

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 高齢社会が進展する中、市は福祉にも力を注いできた。岩倉市長が自ら「ライフワーク」と語る分野だ。「ふくし大作戦」はこれまで11、16、17年度の3回展開。”福祉”という文字をあえて平仮名表記にし、新たな視点による支え合いのまちづくりを目指している。

 中心的な役割を担う市福祉部は一定期間の大作戦を終えた後も、活動の継続性を重視する。地域住民が集う「ふれあいサロン」の活動推進や手話普及など、大作戦の取り組みに位置付けた事業をさらに進め、道内自治体で先進的導入となった身体障害者用トイレ搭載の福祉トイレカー活用も続けている。

 職員の意識も変化が見られた。福祉部の若手職員らが主体的に単身高齢世帯の見守り活動など住民の取り組みを取材し、今年3月に各地域に紹介する事例集を製作。職員が地域に入り、活動のサポート役も担うなど、庁内で協働のまちづくりの実践意識も広がりつつある。

 大作戦に関わった各部署のベテラン職員は、住民の一員として地域活動を促す若手の動きに「昔の市役所だったら、できなかった取り組みかもしれない」と言った。

 少子高齢化と人口減少が同時進行する未知の時代へ突入した中、それに対応した柔軟な発想と行動が求められる市政。再び大作戦を引っ提げて荒波へ船出した岩倉丸の行方が注目される。

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