2

18(月)

胆振の
明日の天気

曇り後雪か雨

7 / 0

シリーズ「未来創生」

第4部・ウトナイ湖を次代へ (1)進む乾燥化 変わる植生

2016/11/28配信

 「35年前、私が初めてここに立った時とは、景色が大きく変わってしまった。ウトナイ湖の環境は急速に変化している」

 苫小牧市のウトナイ湖の環境や植生の研究を長年にわたって続けてきた札幌市立大学の矢部和夫教授は、湖周辺を眺めながらそう語った。

 同湖の湿地帯は、周辺の開発や水位低下による乾燥化が進んでいる。湿地の草原化や樹林化により、飛来する野鳥の種類も変化するなど、徐々にウトナイ湖はかつての姿を変えようとしている。

 今年6月、矢部教授と一緒に同湖北西岸の湖畔林を歩いた。ハンノキがうっそうと覆う林の中で、矢部教授は「この場所は以前、ヨシなど湿性植物が群生する場所だったのに」と振り返った。

 湖岸から陸地へ70メートルの範囲内の調査によると、過去50年で湿性植物は5分の1以下になり、ハンノキなどが茂る樹林の拡大が顕著に進んでいることが判明。森林化により、35年前はほとんど見られなかったエゾリスも頻繁に姿を現すようになった。同湖周辺の環境変化について「自然の変遷とは違って、スピードが速過ぎる」と指摘。「河川工事や宅地開発など人間活動が大きな影響を与えたと考えている」と話した。

 勇払原野の面影を残し、植物相の多様性を誇りとした同湖の自然の危機を憂い、「人の手によって変化してしまったならば、再び人の手で元に戻さなければならない」と矢部教授は力を込めた。

    ■   ■

 同湖は周囲9・5キロ、面積230ヘクタールの淡水湖だ。これまでに観察された野鳥は260種超。日本で見られる鳥の約半数に上り、野鳥の重要な渡り中継地、生息地として国内外に知られる。

 しかし、野鳥の関係者が気に掛けていることがある。日本野鳥の会(東京)によると、植生の変化によって飛来する野鳥の種類も変わりつつあるという。草原性を代表するホオアカやオオジュリンの観察頻度が激減し、森林性のキビタキやセンダイムシクイがよく目にするようになった。

 同会ウトナイ湖サンクチュアリの中村聡チーフレンジャーは「複合的な要因によるものと考えられるが、ウトナイ湖の環境変化も大きく影響している」と言う。

 同湖を管理する室蘭建設管理部によると、ウトナイ湖の平均水位は1960年代に2・3メートルあったが、77年には1・6メートルまで低下した。危機感を抱いた同管理部は98年、同湖から水が流れ出る勇払川下流に可動式のウトナイ堰(せき)を設置。湖水の流出量を調整し、乾燥化の防止に努めている。

 さらに昨年秋から、湿地環境の再生に向けて、平均水位を2・1メートルに維持するよう堰を操作し、効果を検証している。将来的には現在の水位より30センチ引き上げ、1960年代と同水準の2・3メートルにしたい考えだ。同管理部治水課の八幡和則主査は「急激な水位上昇は環境に大きな影響を及ぼす恐れもあるため、植生などをよく観察しながら段階的に進める」とし、堰調整の成果に期待を込める。

      ◇

 ウトナイ湖は、湿地環境保全の国際条約「ラムサール条約」の登録湿地となって12月で25年の節目を迎える。同湖や、それを取り巻く環境変化の現状と対策、豊かな自然を守ろうとする関係者の思いを取材した。

週間ランキング

集計期間 02/11〜02/18

お知らせ

受付

苫小牧民報社から