道議会は、顧客が理不尽や要求や悪質なクレームを突き付けるカスタマーハラスメント(カスハラ)の防止条例を制定する。全会派による議員提案の形で、26日開会予定の第4回定例道議会に提出する。18日には冨原亮議長に、条例案の内容を示した。可決されれば10月の東京都に続き、全国で2番目。議員提案としては全国初となる。
カスハラは、従業員に土下座して謝罪するよう強要したり、暴言を吐いて過度な要求を繰り返したりするなどの迷惑行為が該当するとされる。道内でも近年、被害を受けた従業員が心身の不調で離職や自殺に追い込まれるなど、小売・サービス業界を中心に深刻な問題となっている。
道議会では2月に、最大会派の自民党・道民会議が内部に「検討部会」を設置し、議論を開始。6月には自民の呼び掛けに、民主・道民連合、北海道結志会、公明党、共産党、維新・大地の他の会派も応じ、全会派による「検討会議」を設置。計7回開いたほか、道民へのパブリックコメント(意見公募)も実施し、条例案をまとめた。
条例案は、前文のほか(1)総則(2)基本的施策(3)北海道カスタマーハラスメント対策協議会(4)雑則の計4章、18条で構成。「カスハラ対策を総合的に推進して、従業者等が心身の健康を保持して能力を有効に発揮し、充実した生活を営むことができるようにするとともに、事業者等が顧客等との良好な関係のもと安定的に事業を継続し、社会経済の健全な発展に資すること」を目的に掲げた。
カスハラについては「従業者に対する顧客からの要求、言動のうち、その態様や程度が社会通念上、不相当なものであって、当該要求、言動により、従業者の就業環境が害される行為」と定義した。
道や顧客、事業者の責務、道民の役割も明記。道が実施する基本的施策としては、指針の作成▽情報収集・情報提供▽相談支援体制の整備▽人材育成▽啓発活動▽関係機関との連携―の6本を柱に据えた。また、道や市町村、事業者、関係機関などで構成する北海道カスハラ対策推進協議会の設置も求めた。
条例案は議員提案の形で、26日開会予定の定例道議会に提出。今のところ初日の本会議で審議する方向で最終調整している。その後、道がカスハラ対策の指針を作成し、来年4月1日からの施行を目指す。
18日は検討会議のメンバーが冨原議長に条例案を提示。座長を務めた清水拓也氏(自民党・道民会議)は「カスハラは従業員の心身に重大な影響を及ぼし離職につながるなど、消費生活、経済にも極めて大きな影響を及ぼす恐れがある」と条例の意義を説明。冨原議長は「議員提案のカスハラ条例としては全国初になる。しっかり成立させ、北海道のいろんな分野でカスハラ対策の効果を発揮する、意味のある条例として制定したい」と応じた。