目奪われる
美しさ

〜ベニマシコ〜


猿に似ている?

ナギナタコウジュ
 ベニマシコはカワラヒワなどと同じアトリ科の野鳥で、体の大きさはスズメくらい。尾羽が長めで、雌は全身が地味な茶褐色ですが、雄の成鳥は全身が紅色で、頭上と顔からのどにかけて白く、とてもきれいです。
 ベニマシコ(紅猿子)のベニ(紅)は雄の美しい羽の色から付けられ、マシコ(猿子)は猿の顔のように赤いことや、猿のように騒がしく鳴くことから付けられたという説が有力です。ちなみに英名ではLong Tailed Rose Finchと呼び、こちらも特徴をよく表しています。
 分布しているのはユーラシア大陸の東部など、主に亜寒帯で、国内では下北半島の一部と北海道でしか繁殖しない夏鳥で、本州以南では冬鳥です。しかし、北海道でも積雪の少ない地域で越冬するものがいて、勇払原野では一年中姿を見ることができます。
 ベニマシコは平地から低山の林縁部や低木林などの開けた場所に好んで生息し、繁殖期は5月ころからです。低木の上ややぶの中に枯れ枝や枯れ草を使っておわん型の巣を作り、子育てをします。主な食べ物はイネ科やタデ科の植物の種や昆虫ですが、原野では冬になるとナギナタコウジュの種を特に好んで食べる傾向があります。ナギナタコウジュはシソ科の多年草で、コウジュ(香樹)という名前の通り、全草にかなり強いにおいがあり、特に好んで食べるのには、何か理由があるのかもしれません。
 野鳥の鳴き声には一般的に繁殖期に聞かれる「さえずり」と普段の鳴き声である「地鳴き」があり、さえずりが種類を区別する時の基準になることが多いのです。しかし、ベニマシコはホオジロに少し似た「チュルチュルチー、チュルリチュルリ」という複雑なさえずりよりも「ピッポ、ピッポ、ピポポ」という地鳴きの方に特徴があります。
 

マシコの仲間

 現在、北海道で見られるマシコという名前の付く野鳥には、ベニマシコのほかに、オオマシコ、ギンザンマシコ、ハギマシコの三種類がいます。
 この中で最も大きいのがギンザンマシコで、国内では大雪山系のハイマツ帯で初めて繁殖が確認され、日高山脈や知床半島などの高山帯でも繁殖している可能性があります。繁殖期に平地で姿を見ることはありませんが、冬になると厳しい生息環境になる高山帯を逃れて平地に下りてくるため、市街地にある針葉樹林などで姿を見ることもあります。
 また、ハギマシコは大雪山での繁殖の可能性がありますが、越冬のために飛来する冬鳥で、秋になると小さな群れでいるところを勇払原野で見掛けることがあります。オオマシコはベニマシコよりも少し大きく、ベニマシコによく似ていますが、ベニマシコの翼にある二本の白い帯や尾羽の外側の白色部が無いことから区別することができます。ハギマシコと同じく冬鳥で、秋遅くから春にかけて姿を見ることがありますが、飛来数が少なく、出合う機会は多くありません。
 

勇払原野のベニマシコ

 野鳥観察の魅力の1つは鳥たちの美しい姿や色を楽しむことにあり、それを趣味にする人にとって、冬に見られる赤い鳥はとても魅力的な存在です。
 原野で見られる赤い鳥にはベニマシコやハギマシコのほか、イスカやウソ、ベニバラウソ、ベニヒワがいて、冬の原野で出合うと、周囲の単調な色彩が引き立て役になって、その美しさに目を奪われてしまいます。
 日増しに寒さが厳しくなり、野外に出るのがおっくうになりますが、この冬は赤い鳥を探しに原野に出掛けてみてはいかがでしょう。勇払原野はベニマシコがとても観察しやすい場所で、ウトナイ湖や北大研究林の他、市街地に近い緑ケ丘公園などでも、鳴き声を聞いたり姿を見ることができます。

 (ゆうふつ原野自然情報センター・村井雅之、イラストも)

ふるさとネイチャーらんど苫小牧民報社