企画・特集

地域資源に懸ける―北の夢白書―

(6)苫小牧 「美苫」ブランドで地域活性化

(2009年 5/30)

原料の酒米を作る厚真町の田んぼ。市民参加の田植え体験も

 「苫小牧で面白い地酒を造ろう。もし売れなかったら、われわれで買い取ればいいさ」

 こんなやりとりから生まれた苫小牧の地酒「美苫」。酒蔵もないまちで、北海道中小企業家同友会苫小牧支部メンバーによる地酒を造ろう会が2001年、地産地消にこだわり、苫小牧市の水と厚真町の酒米による地酒造りに挑んだ。

 1年目の4000本から毎年販売本数を伸ばし、8回目の蔵出しとなった昨年は1万2000本まで販売実績を上げた。焼酎に押され気味の日本酒としては、「異常な販売本数」と販売店。菓子など関連商品も次々に開発され、まさに美苫ブランドを確立しつつある。

 発案者の一人、同友会の西川辰美相談役は「利益優先でなく、美苫を通して、地域活性化にかかわる人のつながりを広げたかった」と振り返る。地酒を造ろう会を名称変更し、普及と販売促進の企画を担う美苫みのり会の市町峰行会長も「人のつながりがなかったら、この酒はできなかったでしょうね」と話す。

 小樽市の田中酒造、厚真町の稲作農家、水を提供する苫小牧市。「美苫」の完成には、さまざまな人たちの協力やアイデアが詰まっている。

 初蔵出し後、甘酒や濁り酒と酒類を広げたり、酒かすを使ったシフォンケーキやようかんなどの菓子類、ラーメンなど関連商品も続々と登場。あらゆる業種の人たちが、「うちも美苫で何かできないだろうか」と商品開発に挑んだ。

 店内に美苫コーナーを設ける洋菓子のファームソレイユ=苫小牧市新開町=の本田泰司代表は「吟醸酒の酒かすは味も食感も良く、原料として面白い。料理にも使えるので、もっと美苫の輪が広がれば」と話す。同店の菓子類の評判も上々で、ゼリーなど新商品作りに力を入れている。

 美苫みのり会は、郷土の酒を多くの市民に親しんでもらうため、田植え、稲刈り、酒造りまでの全工程を体験してもらう「びせん倶楽部」も設立。美苫ヌーボーや屋台などのイベントを催し、一層地域に浸透させた。

 田植えに参加した市民は「自分の手で植えた稲から美苫ができるのが楽しみ」と話す。販売店も「市民の方から美苫を楽しみにしてるよ、と声を掛けてもらえるようになった」とイベントの手応えを感じている。

 会の挑戦はさらに続く。「この酒が世界で認められるだろうか」と昨年、世界的な食品の品評会モンドセレクションに応募。初出品にして金賞を受賞した。市町会長は「まさかとは思ったが、何でもやってみないと分からないもんだよ」と、3年連続の金賞を目指して、またチャレンジするつもりだ。

 全国的に日本酒の消費が下火にある中で、確実に販売本数を伸ばしてきた。市民権を得て、苫小牧の地酒として浸透しつつも、今後、さらに販売本数を伸ばし続けられるかは未知数だ。このため、同会は、企業や市民の協力を得ながら、次なる一手を模索中だ。

 「美苫」の成功を関係者らは、「チャレンジを積み重ねた結果」と誇る。世界もその品質を認めた地酒。それを生かした地域活性化の取り組みは、新たな展開を迎えようとしている。