企画・特集

継承の風景―北の夢白書―

(7)獅子舞を後世に

(2009年 10/26)

酒井さん(右端)から舞の指導を受ける植野さん(左端)

 蒸し暑い夏の夜。苫小牧市中心街をエリアとする二区町内会の会館に、町内の男たちが集まった。笛や太鼓の祭りばやしの音色が響く大広間で、厳しい指導の声が飛ぶ。二区町内会が7月の樽前山神社例大祭に合わせて続けている「あばれ獅子」の練習風景だ。

 駅前通りでスポーツ店を営む酒井明さん(62)は指南役。重さ10キロもある大きな獅子頭を抱え、魂を込めた激しい舞を見せる。

 「もっと跳ねるように、もっと力強く!」

 指示を飛ばしながら舞う酒井さんの動きに合わせ、伝統の郷土芸能を受け継ぐ植野泰幸さん(27)もまた激しく獅子頭を振るう。

 二区町内会のあばれ獅子の起源は、大正時代までさかのぼる。戦争の影響で1943年ごろに中止に追い込まれたが、戦後間もなくして復活。中心街の夏の風物詩として地域住民を楽しませたが、後継者難から年ごろに再び途絶えた。

 「このままでは消えてしまう」。約30年前、危機感を抱いた町内の若手らが立ち上がった。その一人が酒井さんだ。あばれ獅子を知る先輩を訪ねて技術を継ぎ、81年、四半世紀ぶりに復活させた。

 景気や商業環境の変化で勢いを失った中心街。「街を元気にしたい。そんな思いがあったんだ」。町内会館の管理人を務める乾与造さん(67)は、酒井さんと共に獅子舞の復興に挑んだ当時を振り返る。

 「自分たちができる間はやっていこう」。酒井さんらは、そう心に決めて舞い続けた。しかし、メンバーの高齢化が進み、あばれ獅子の未来に再び影が忍び寄った。

 郷土芸能の火は絶やさない―。危機に立ち向かったのは、やはり町内の若手だった。

 「自分を育ててくれたのはこの街。いつか恩返しが出来ればと思っていたんです」。錦町にある父のラーメン店で働く洞口大さん(27)は、4年前からあばれ獅子に参加。洞口さんの呼び掛けで、同じく錦町で父の飲食店を手伝う植野さんも舞い手に加わった。

 あばれ獅子は名前の通り、激しい獅子頭の動きと、跳ねるような足の運びが特徴。樽前山神社例大祭では、中心街の飲食店や商店、事業所を舞いながら巡る。狭い場所でも、いかに見せ場がつくれるか。高度な技術が要求される。

 今年の夏、あばれ獅子に参加した町内の若手は3人。人手不足は、アルバイトの大学生でカバーした。依然として後継者難の状況にあるが、「先輩たちが抜けた後を考えると、不安。けれど、継承することが自分たちの使命と思っている」と洞口さん。植野さんも「生まれ育ったこの地域のために、絶やすわけにいかない」と話す。

 愛する街のために―。若者たちの熱い思いは今に引き継がれ、伝統文化の未来を支えている。