企画・特集

継承の風景―北の夢白書―

(5)若者に平和の尊さを

(2009年 10/23)

朗読劇で平和の大切さを訴える舘崎さん=今年8月

 「核兵器を廃絶することは、次世代への最低限の責任です」

 長崎市に原子爆弾が投下されてから64年目の夏を迎えた8月9日。苫小牧で開かれた原爆詩の朗読劇の会場で、主催者代表の舘崎やよいさん(68)は訴えた。

 朗読劇は、ヒロシマ・ナガサキを語り継ぐ会による「あの夏を忘れない―1945・ヒロシマ・ナガサキ」。舘崎さんは、苫小牧市民でつくる同会の代表を務めている。毎年夏に原爆の恐ろしさや戦争の悲惨さを訴える朗読劇を開き、14年になる。今年は市内に住む被爆者を招き、悲劇の体験も語ってもらった。

 なぜ、朗読劇を続けているのか―。それは、敗戦から50年を迎えた年、被爆者との出会いがきっかけだという。

 「たった1日で運命を変えられてしまった人たちの言葉を語り継ぐことが、わたしたち日本人としての役割ではないか」。平和を願う舘崎さんのそうした思いが、周囲の人たちも動かし、朗読劇へとつながった。

 しかし、悩みもある。それは被爆者も、そして劇を上演する自分たちも高齢化し、平和の尊さを伝える活動が先細りする恐れがあることだ。

 「どうやって若い人たちに引き継ぎ、原爆詩を語り継いでもらうか」。それが、大きな課題だという。

 そこで目を向けたのが、市内の高校演劇部。昨年は苫小牧南高、今年はさらに苫小牧東高の協力を得た。

原爆詩を朗読する高校生

 今年の朗読劇で苫小牧南高演劇部は昨年に続き、広島原爆を描いた絵本「ひろしまのピカ」の読み聞かせを行った。苫小牧東高演劇部は、原爆詩集「八月」を朗読した。

 高校生はどの詩を、どの場面を、どのように読むのか、自分たちで考えて演出した。一瞬にして身内や多くの人々の命が奪われ、原爆症に苦しみ続けた被爆者の悲痛な叫びを代弁した。

 「ヒロシマ・ナガサキについてどう伝えればいいのか悩み、当時のことを調べてみた」、「将来看護師を目指している。命を救うのは大事なことと認識を新たにした」、「心が痛かったけれど、詩を読んでよかった」。朗読劇への出演は、高校生たちにとって平和を見詰める機会になった。

 舘崎さんは劇の練習に取り掛かる前、「実際に体験していないから、表現することは難しいと思うかもしれない。けれど、関心を持ってほしい。原爆のことを考える日を、年に1度でもつくってほしい」と、高校生らに呼び掛けた。

 上演後、参加した男子高生は「自分たちには、知らないことがまだたくさんある。それ(原爆について)を知ったからには、伝える義務ができたと思う」と話した。

 舘崎さんの平和への思いは、確かに若者たちの心に届いている。