企画・特集
継承の風景―北の夢白書―
(4)森の守り人、次世代へ
(2009年 10/22)
丸太をチェーンソーで切る中野さん。宮田さんの指導にも熱がこもる |
厚真町の山林。切り倒した樹木を運ぶ重機のエンジン音が響き渡る。若い作業員が、カラマツの丸太に定規を当てて寸法を測り、慎重にチェーンソーの刃を入れた。木の破片が辺りに飛び散る。若者の仕事ぶりに親方が厳しくも、見守るようなまなざしを向ける。
「うまくいったかな」。狙い通りの長さに仕上げることができ、若者の顔にふっと笑みがこぼれた。
苫小牧広域森林組合所属の宮田木材=むかわ町=に勤める中野是生(つなお)さん(24)。林業に携わり、今年で3年目を迎えた若手だ。札幌市の大学を卒業後、函館市で営業の仕事をしていたが、「何となくなじめなかった」と4カ月で退職。帰郷後、親の紹介で宮田木材に入社し、林業という未知の世界に足を踏み入れた。
「もともと、興味があるわけではなかった。初めのころはチェーンソーを持つのもおっかなくて」。中野さんの親方で、社長の宮田重広さん(58)の指導を受けながら、一つずつ仕事を覚えていった。
昔と違って機械化が進んだ現代の林業。宮田さんは「木を倒すのに3、4年。重機の操作を覚えるのに1年はかかる」と話す。中野さんも「最初は基本を覚えるだけで苦労した」と振り返る。
仕事に慣れてくると、林業の奥深さに気付いた。同じ木でも微妙に違うチェーンソーの刃の入れ方、山の地形や樹木の生え方を読んで切、り倒す方向を見極める技―。腕を上げるたび、函館にいたころには味わえなかった充実感が込み上げてきた。成長をで実感できるのが、うれしかった。
林業を取り巻く環境は厳しい。若者が集まらず後継者不足に悩むのは、1次産業に共通の課題だ。森林組合でも、全体で90人近くいた現場の作業員が、今では60人ほどに減った。高齢化もしており、後進の育成が不可欠だ。宮田さんは「若手を育てなければ」と力を込める。
人の手が入った森林は、手入れを怠れば、荒れ果ててしまう。伐採と植林を絶妙なバランスで繰り返し、森を健全に維持していく。脈々と続いてきた営みだ。「若者に一番伝えたいこと。それは、森林を守り育てていくことの大切さなんだ」と宮田さん。その思いは、着実に次世代へ引き継がれている。
「どの現場にいても、優れた仕事ができるようになりたい」と中野さんは言う。林業の衰退は、故郷の山の荒廃につながる。だからこそ、「森の守り人」になることを目指し、日々の仕事と真剣に向き合う。 自然豊かな山林をいつまでも残したい。森の未来を担う若者は、過去からつながる技術をしっかり受け継ぐつもりだ。


