企画・特集

新型インフル・第2波に備える

(上)医療機関

(2009年 6/29)

発熱外来で患者受け入れの手順を確認する苫小牧市立病院の職員=5月

 6月22日、苫小牧市立病院に苫小牧保健所から一通のファクスが届いた。厚生労働省が示した新型インフルエンザ対策の新指針と、道の対応を説明した内容だった。

 国の新指針は、新型に感染した疑いのある患者を発熱外来だけで診るのでなく、すべての医療機関で診察できるよう改定。一律の入院措置を取りやめ、軽症ならば自宅療養とすることも決めた。道も対策のかじを切り、5月に発熱外来を設置した道内54の感染症指定病院などに通知した。

 改定は、秋以降の「第2波」の流行で患者が大量発生した場合、発熱外来がパンクする恐れがあるからだ。「うちの発熱外来の受診者は、これまでにわずか1ケタ。だからこそ対応できたが、殺到したならば、どうなっていたことか」。同病院の藤咲淳院長はそう話す。24日には、軽症者を自宅療養にするなど、国の方針転換に沿った形に診療態勢を変えた。

■   ■
  発熱外来は実際にパンクした。5月16日、国内で新型感染が初めて確認された神戸市。予想以上の早さで広がり、発熱外来に患者が殺到。入院などの受け入れ能力が一気にオーバーした。苦肉の策で同市は、一般診療所でも患者を診る態勢を取った。

 今回の新型ウイルスの出現は、幸いにも北半球で夏へ向かう時期だったため、神戸市の流行も短期間で終息。国内全体の感染者は日現在で1048人、道内での確認も6人と小規模にとどまっている。

 だが、通常インフルエンザは冬に流行するため、秋以降の第2波で感染者がかなり発生する恐れがある。季節が反対の南半球では、感染者が爆発的に増えている。

 このため、冬に苫小牧地域でも流行するようになれば、「従来の発熱外来に限定した対応では、混乱するのは明らかだ」と、苫小牧市内の医療関係者は指摘。市医師会も「全医療機関で対応する基本方針は、会員医師のコンセンサスが得られるのでは」と、新指針に一定の理解を示す。

■   ■
  神戸市の流行事例は、新型ウイルスの感染力の強さも見せ付けた。発熱相談センターが患者の電話を受け、発熱外来を紹介する仕組みも、あっという間の感染拡大で破綻(はたん)した。こうした事態を教訓にした国の新指針。まん延期に至る前に、全医療機関で受診できるようにした背景には、今回の新型は季節性インフルエンザと同等の弱毒性という安心感も絡んでいる。

 道は当面、発熱外来を維持しながも、一般医療機関でも診察できるよう段階的に整備。患者の受け入れを医療機関側に求めていく見通しだ。

 しかし、この新指針に戸惑う医療関係者は少なくない。国は一般医療機関にも発熱外来と同様、他の患者に感染させないよう、待合室や診察時間を分けるなど工夫を求めている。だが、「スタッフが足りず、スペースも無い小さな診療所で患者を区分けするなどむちゃな話」と市内の小児科診療所の院長は言う。

 また、渡航歴が無くても新型に感染したケースが国内で相次いだ中、別の診療所の医師は「季節性インフルがはやる冬の時期に、新型と季節性の患者をどう見分けろというのか」と疑問視。一般医療機関でも重症者を入院できるようにした方針に関しても、ある病院は「二次感染を防ぐ設備の不十分さから、受け入れは難しい」と話す。

 新型の病原性は弱い―。「社会に広がる、そうした油断が感染を拡大させ、重症者が出る割合も大きくしてしまう」と指摘する医師もいる。

 市立病院の福島修事務局長は言う。「新型流行時に混乱せず、対応できる地域医療の連携。確立が急務だ」。第2波への備えには、課題が山積している。

 世界保健機関(WHO)は6月11日、警戒レベルをフェーズ6(世界的大流行)に引き上げた。国内では秋以降の患者急増が懸念される中、今後どう対処するのか。苫小牧地方の関係機関を訪ね、課題を探った。