企画・特集

学力低迷

(中)模索の教育現場 目立つ基礎学力低下

(2009年 9/12)

 「小学校で習う分数が理解できない、割り算ができない。そんな高校受験生もいますよ」。苫小牧市内の学習塾講師は、基礎学力が足りない中学生が多く見られる現状を憂い、「教師の指導力の低さや、ゆとり教育の弊害だ」と指摘した。

 1998年の新学習指導要領で注目を集めた「ゆとり教育」。文部科学省は2002年の学校週5日制の完全実施に合わせ、学習内容を3割減らし、本格的なゆとり教育を始めた。詰め込み教育の反省から生まれたものだった。

 ところが、本格導入からわずか6年後の昨年3月、今度は授業時間数を増やすなど、学力アップを重視した新しい学習指導要領を公示。事実上、脱ゆとり教育への転換を図ったものだ。

 「学力低下を招いている」と、一部の教育関係者の間で上がっていたゆとり教育への批判。世界的な学力テストとされる、経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)で03年以降、日本の子供たちの国際的な学力順位が大きく下がり傾向にある実態も、ゆとり見直しの引き金になった。

 学力向上へ、急ハンドルを切った日本の教育行政。苫小牧駒沢大学の伊藤勝久准教授(教育学)は、教育行政の迷走ぶりや点数偏重を心配しながらも、確かな学力を付ける必要性について「子供が将来の仕事、生き方の選択肢を広げるためだ」と明快に説明。「勉強とは、自分が描く将来像を実現するための手段。学校や保護者は学びの意味を、しっかりと教えることが大事だ」と話す。

 「はーい先生、僕分かるよ」「簡単、簡単」

 自信に満ちた表情で手を挙げ、教師の質問に答える児童ら。活気ある教室。苫小牧明野小学校(寺田洋子校長)の少人数制授業の風景だ。

 少人数制授業は算数科目で採用。通常、1教室の児童数は35人ほどだが、算数の授業は児童を振り分け、1教室20人以下になるようにしている。少人数だから、教師は1ひとりの習熟度に目を行き届かせることができる。

 少人数制授業を担当する荒木英弥教諭は「子供のつまずき、ノートの書き方もじっくりと観察でき、学習内容が分からないまま授業が進んでしまうということがない」と効果を話す。

 中学校でも取り組みが始まっている。その一つが、放課後勉強会だ。

 苫小牧光洋中は毎週木曜日、放課後の教室に生徒を集め、教師5人が数学指導に当たっている。授業中に分からなかった問題を解決させ、学習内容の定着を図るのが狙いだ。市教育研究所・学力向上研究委員会の委員長も務める沖田秀児校長は、「さらに手だてを講じたい」と言う。

 国の教育方針の流れを受け、学力アップへ試行錯誤する教育現場。「少人数制など、きめ細かな指導体制が効果を上げるのは確か。だが、教員が足りず、あっぷあっぷの状態だ。掛け声だけではだめだ。それに伴う教育環境の整備が伴わなければ」とある学校幹部。プレッシャーが強まる現場からは、そうした声が高まっている。