企画・特集
ドームよ永遠に 樽前山溶岩円頂丘100年
(5)植物たちの100年
(2009年 4/17)
樽前山の高山植物の代表格・タルマイソウ。紫色が美しい=2006年7月 |
樽前山は太平洋側から見ると7―8合目から上が不毛の火山灰の斜面に見える。森林限界が微妙にうねり、くっきりと線になって見える。
しかし火山灰の斜面にも火口原にも、植物たちは生きている。山ろくの道道を通って近づけば、初夏にはうっすらと緑に、晩秋には黄色や赤に、山肌の色が変わる。植物たちの葉の色だ。
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森林限界から上の植物の種類は「約80種。火口原だけでも20種類は生きている」と、樽前山の自然を愛する会の新沼友啓代表。コメバツガザクラ、ウコンウツギ、イワヒゲ、イソツツジ、タルマイソウ、イワギキョウなど、春早くから初秋まで、登山道脇のいろいろな花が、汗だくの登山者を励ましてくれる。
5月下旬に咲き始めるイワブクロ。樽前山に多いことから「タルマイソウ」の別名がある。大雪山系の主峰・旭岳にも、十勝山系の最高峰・十勝岳(2,077メートル)にもイワブクロはある。紫の色具合や透明感は樽前山のものが一番と思うのは、おそらくひいき目。
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火山灰が数十センチも積もる噴火があれば、これらの植物は死に絶える。降下物の熱が冷め、何千回の雨を浴びて酸性度が変わり、やがてコケ類が生え、そこに鳥や風が高山植物の種を運び、花が咲く。植物たちは、この山の上で、死滅と再生を9000年の間に何度も繰り返してきた。
夏、外輪山から溶岩ドームの急壁面に目を凝らすと、緑色の塊がポツポツと見える。イワブクロやシラタマノキが種を飛ばし、根を延ばしてドームに登り始めた印だ。
目を北に移すと、緑に覆われた風不死岳。約3万年の時を経て、頂上の溶岩ドームも含め、今は丈の低い高山植物だけでなく、ダケカンバやササに覆われ、山全体が鮮やかな緑色に見える。
樽前のドームや火口原も、あと1万年もたてば風不死岳のように豊かな緑に覆われる。噴火さえなければ―の話。
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樽前山には標高700メートル弱の所に大きな駐車場があり、子供連れでも1時間もあれば東ピークに立つことができる。ヒュッテの近くには支笏湖や風不死岳を一望できる展望台もある。ミヤマハンノキを切り、高山植物を引きはがして整備した展望台の脇には、季節になればコケモモやイソツヅジの花が咲き乱れる。
この100年でいえば、高山植物たちの命を最も脅かしているのは、噴火ではなく「人間」だ。


