企画・特集
公から民へ~公営バス 先進地の選択~
(6)座談会
(2009年 11/30)
先進地の取り組みをどう生かすか |
公営バスを民間に移譲した秋田、岐阜両市の取材を通して、担当した木村昌人(秋田)、完戸雅美(岐阜)両記者が、それぞれが感じたことやこれから苫小牧市営バスが移譲を進める上で、利用者を含めた市民が考えていくべき点などを話し合った。
―秋田、岐阜両市ともに移譲の理由はそれぞれ違う。行政、民間の対応で印象に残ったのは。
木村 秋田市は、一般会計からの繰出金が10億円前後という財政問題が民間移譲に踏み切った大きな理由。その意味で苫小牧とよく似ている。移譲は民間との競合路線から始めたが、ほかの路線も収益が改善せず、最終的に市はすべての路線を移譲した。財政的問題が出発点だけに必然な流れという感じだ。
ただ、移譲で路線バスに替わるコミュニティーバスや乗合タクシーは、住民の求めるサービス水準に十分応えているとは思えない。どんな方法がいいのかは難しいが、地域性を考慮して試行を繰り返していくことが必要なのではないか。
完戸 岐阜市の場合は、まちづくりの観点から公共交通を維持させるために一元化した。決定の翌年から段階的に移譲したことからも、市民や議会への説明が上手に思える。特に、苫小牧のような財源問題が焦点ではなかったので、民間に丸投げするのではなく、行政と民間が対等な立場で公共交通の在り方を議論しているところが強く印象に残った。
―両市とも市民の反応は厳しくなかったのだろうか。その理由は。
木村 当初、路線が無くなることの不安を抱いていた郊外の市民も「路線バスが維持できない場合、コミバスや乗合タクシーの代替交通を行う」との説明から、移譲を容認する声が広がったように思う。
完戸 岐阜市のマイカー普及率は全国的に高いが、市民は歩くことを苦にしないので、移譲前のダイヤの見直しに影響を及ぼさなかった。行政の市民に対する説明も「市営バス廃止」ではなく「岐阜バスに一元化」だったので、日ごろ見慣れたバス会社という点に安心感があったようだ。
―両市は路線バス問題をまち全体の中でどう位置付けている。
木村 秋田は公共交通政策ビジョンを作り、中心部から放射状に伸びるバス網の整備など衰退する中心市街地のコンパクトな市街地形成へ、バス路線を位置付けている。特に、駅と市役所の間や一部地域のコミバスから中心部への乗り継ぎ便は非常に多く、中心街に人の流れを呼び込むようなサービスにしているのが印象に残った。
完戸 岐阜は駅前ターミナル整備のように、まちの顔である駅前開発を進め、まちづくりの中に公共交通がしっかりと位置付けられている。町の形態や経済基盤、隣接する名古屋市との関係もあるが、市民の移動手段として利便性を高めようとしている。誰もが分かりやすくバスに乗車できるよう配慮されているのもよかった。
―移譲と向き合う苫小牧市民はバス問題をどう考えていくべきだろうか。
木村 地域の活性化と絡めた運行ルートの開拓など、市民も真剣にバス事業者や行政と一緒にアイデアを持ち寄ることが必要ではないか。マイカーで移動している市民も、お年寄りなどの交通弱者の視点で、路線バスがどのように運行しているのかを見つめていくことが重要だ。
完戸 財政規模から苫小牧と岐阜の単純比較はできないが、公共交通を存続させるための利用促進策は参考になった。事業者や有識者の意見を参考に取り入れ、バスの在り方を真剣に議論している。歴史的背景が異なるかもしれないが、多少歩くことを苦にしないといった意識も必要ではないか。非効率的な路線やバス停の在り方を考え、公共交通として維持するには市民の関心を高める努力が必要と感じている。(おわり)


