企画・特集
公から民へ~公営バス 先進地の選択~
(4)移譲後の足
(2009年 11/26)
バスターミナルの案内所=JR岐阜駅前 |
「20分くらいなら歩くのは平気だよ。それ以上遠ければバスを使うけどね」。JR岐阜駅の駅前ターミナルでバスを待っていた70代の女性はこう話した。
歩くことをさほど苦にしない市民。一元化によるダイヤ改正も、通院や通勤に大きな影響はもたらしていない。
事業者や市も利用促進には力を入れている。例えば、バスが敬遠されがちな理由に挙げられる運行の遅れ解消へ、運行状況や到着時間を文字表示する接近情報システムをバス停に導入。
低床バス導入など国や県、市、岐阜バス合わせた設備投資額は20億円。しかし、多額の投資も利用者の減少に歯止めを掛けられていない。
模 索
市から岐阜バスへの補助金は、約8000万円で推移しているが、移譲路線への補助は当初の2005年度の3700万円から08年度には5600万円まで増大。移譲路線の半分の4路線が不採算で、うち2路線の赤字額が年々増えている。
「赤字路線の廃止を含め路線を効率的に見直したい」。岐阜バスは市に申し入れた。市は路線廃止に応じず、補助金上積みを回答。協議は難航中。ただ市は「赤字路線が増えてくれば、補助金だけでは賄いきれない。何らかの対応を検討する時期にきた」と話し、財政支援の限界を認識する。
市内の交通体系の在り方を協議する市総合交通協議会のメンバーで、岐阜大学の竹内伝史教授(工学博士)は「新規参入の難しい市場だが、競争原理がなければいずれサービスは低下しかねない」と指摘する。縮小するバス市場が競争を阻害し、利用者の足を奪うことへの警笛だ。補助金上積みか、路線廃止に伴う代替策検討か。先進地も模索を続けている。
公営と民間の競合路線から始まり、06年度に全路線を秋田中央交通に移管(移譲)した秋田市。この間の動きを市民はどう感じているのか。
JR秋田駅からバスで約20分の西部地区に住む60代の主婦は「市立病院を含め市街地や駅までバス1本で行ける。民間に替わった後も不便を感じた事は無い」と話す。
代替手段
市街地路線は維持され影響はなかったが、郊外はそうではない。同社は不採算路線を引き継いだことによる赤字幅の増加から、移管途中の04年、市にその対策を要望した。
これを受け市は郊外の不採算路線(15路線)を、乗り合いタクシーなどの代替手段で委託運行することを決定。事実上、09年度までに郊外の9路線が廃止された。
北部地域の70代の住民は「市街地まで行くのに乗り継ぎが必要になり、不便になった」と不満を漏らす。
しかし路線再編は必ずしも収益増にはつながっていない。秋田中央交通によると、08年度は原油高騰などで路線バス事業(秋田市以外も含む)の経常損失は5億1900万円。高速バスや不動産事業などで圧縮したものの、移管後初めて150万円の赤字を計上した。同社は「中心部の運行収入はいいが、全体で毎年5~6%落ちている。今後は車両への補助などを検討してもらいたい」と話し、補助金の増額を求める。
市の補助金は、09年度(予算ベース)で5700万円。移管前の繰出金の10億円に比べると、10分の1以下に抑えられているが、今後は増額への対応も迫られている。しかも、交通事業会計の累積赤字は、移管で約3億円圧縮したものの、約13億円は残り、一般会計に引き継いだ形だ。


