企画・特集

2009 この1年

(8)イトーヨーカドー撤退

(2009年 12/22)

閉店説明を受ける商工会議所役員ら=6月(上)と2010年1月11日に閉店するイトーヨーカドー苫小牧店

 まだ寒さの残る4月22日、イトーヨーカ堂の牧野英夫執行役員ら3人が苫小牧市役所を訪れた。「苫小牧店を閉店することになった。来年1月中旬をめどにしている」―。これが、今年苫小牧を大きく揺るがしたヨーカドー撤退問題の始まりだった。5月7日に市、市議会、商工会議所、市商店街振興組合連合会で構成する4者会議が水面下で開催され、この内容が市から伝えられた。会議後、記者に内容を聞かれた関係者は口をそろえて、「人事異動による自己紹介だ」と述べた。この後問題が表面化するまで1カ月半。この空白は後に、4者内部でも「4月から分かっていながら、もっと早くに地元としてできることがあっただろう」との不満を噴出させる一因となった。

 イトーヨーカ堂が正式に閉店を地元に伝えたのは6月18日。市商連、商工会議所、市の順に牧野氏ら3人が説明に回った。説明を終え、すぐに帰ろうとする幹部ら。商工会議所役員の「ちょっと待ってください。出店時の責任はどうなるのか」と語調を強めた声が、会議室のドア越しに響いた。

 この日伝えられた苫小牧店の売上高は2002年の約100億円をピークに下がり続け、08年は42億円。撤退を検討した05年から4年間の赤字はおよそ15億円。「イオン」とは言わなかったものの、牧野氏の「街の様子が大きく変わった」の意味は想像するに難くない。しかし、記者会見で都市計画の在り方について問われた岩倉博文市長は「消費動向の変化だ」「経済原則だ」と繰り返し強調するだけだった。

 「今のままでは、どこが入ってもうまくいかない」。12月上旬に苫小牧市内を訪れたアークス(札幌)の横山清社長はこう指摘した。直前の11月末、後継に長谷川産業(帯広)の出店が内定したことを受けた発言だ。にぎわいを失った中心街の衰退の現状が、道内流通最大手のトップの発言で裏付けされた。

 4者は今回、イトーヨーカ堂に対して存続要請姿勢を取ったものの、この間に市は、柳町にショッピングセンターを計画する民間企業に市有地を売却。「街の様子」の変化に拍車を掛ける姿勢にイトーヨーカ堂関係者は不快感をあらわにした。

 苫東開発を背景に一気に市街化区域が広がった街は、一時人口35万人都市の絵を描かせた。苫東計画の破綻(はたん)以降も、住宅地の拡大路線が見直されないまま、「経済原則」やその時々の都合に応じて形成されていった。そこに市民視点のまちづくりの理念や展望は読み取れない。イトーヨーカドー苫小牧店撤退と市有地売却は、いまだ迷走を続ける苫小牧の姿を象徴する。