企画・特集
あしたの風
子供たちにサッカーの楽しさを伝える
石塚 東洋雄(いしづか・とよお)さん(67)
(2009年 5/2)
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多くのスポーツには試合中、チームのベンチに戻って監督やコーチの指示を聞く時間がある。劣勢となれば、タイムアウトを取ることもできる。だが、サッカーにはそれがない。スタッフの指示が聞き取りにくい広いフィールドに立つ選手は一度、試合が始まれば、ホイッスルが鳴るまで、すべて自分で考え、自分の判断や力を信じてプレーする。「近くにいる味方とどうコミュニケーションを取るか」。選手個々には、状況に応じてさまざまなアイデアも要求される。だから「サッカーは子供の自立心を育てるのにうってつけの競技」と言う。
「子供たちに、サッカーに向いてもらおう」と考えたのは、駒大苫小牧高校の教員時代。ちょうど非行の低年齢化が社会問題となっていた。共働きの家庭も増え、家に帰っても父母がいない。子供たちの部活や運動離れも加速している。「今まで悪い意味での主役が高校生だったのが、中学生になり、小学生になった」と感じた。駒大苫小牧では30年にわたってサッカー部を指導してきた。「微力でも、サッカーで何か手伝えられないか」の思いが強くなった。
同校を早期退職して、YAGENフットボールクラブを立ち上げ、2004年にNPO法人を取得した。活動の中心は苫小牧や厚真の幼稚園などで開催する短期、長期のサッカー教室。このほか、毎年冬にはフットサルのリフレッシュサッカーフェスティバルを主催し、冬場にあまり汗をかく機会が少ない社会人にも楽しむ場を提供する。また、私財を投じ、自治体の協力も得て整備した厚真町の野原公園サッカー場も好評で、昨季は延べ397チーム1200人の選手が利用した。
NPO法人としてサッカー愛好者を拡大する取り組みはキッズからレディース、シニア世代までと幅広い。ただ、そのベースにあるのはスポーツ好きの子供たちの育成。「スポーツの持っている良さを、小さいうちから覚えてもらいたい。子供の自主性の中で、サッカー以外の別のスポーツに進むのも素晴らしいこと」と話す。YAGENを立ち上げた当初は競技性の高いサッカーの指導も考えたこともあったが、現在は強いチーム作って全国大会に出場することや将来、日の丸を背負う人材の育成にはあまり興味がない。「子供たちが『体を動かすことは本当に楽しいな』と思う動機付けをするのが、たぶん僕の仕事」。地道にスポーツの楽しさ、素晴らしさを伝えていく。(文・写真 対馬 秀孝)
メモ NPO法人YAGENフットボールクラブの会長。北海道サッカー協会では副会長。駒大苫小牧高ではサッカー部のほか、香田誉士史元監督が就任した当初の野球部の指導にも携わった。


