特集

ウトナイ湖野生鳥獣保護センター 救護室からのメッセージ

両足骨折のオオヒシクイ 苦渋の決断、前例ない片足切断

(2017年 3/22)
右足を失ったオオヒシクイ

右足を失ったオオヒシクイ

 昨年の秋、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターに、両足に重傷を負ったヒシクイ(カモ目カモ科)亜種オオヒシクイが搬入されました。越冬のため、はるばる北方から日本にやってきたばかりの時期の事故で、足の骨は左右とも折れ、右足にいたっては折れた骨が外に飛びだすほどの大けがでした。

 すぐに市内の動物病院の協力で精密検査が行われましたが、すでに右足は機能しておらず、末端の一部は壊死(えし)が始まり、直ちに「断脚」をしなければ死を免れない状態でした。しかし、本個体の体重は3・7キロ。同じ水鳥の場合、1キロに満たないカモ類であれば片足でも自然界で生息できますが、体重が10キロにもなるハクチョウ類は片足のみでは重心が取れず、水に浮くことさえできません。今回のオオヒシクイの重さはその中間ですが、片足でも自然界で生息可能なのか、まったく前例はありませんでした。しかし生きるためには断脚のほか道はありません。苦渋の末、右足は切断となり、同時に左足は骨折整復のための手術が行われました。

 それから約2週間、大手術を乗り越えた片足のオオヒシクイはプールでリハビリを行えるまでに回復しました。私たちスタッフの心配をよそに、水に浮くばかりか、先端のない右足の付け根を器用に動かし、自由に動き回れるようにもなったのです。そして毎日リハビリを重ね、いよいよリリースの可能性も見え始めたある日、容体が急変。内服による治療は継続していたものの、敗血症を引き起こしたのか、突然の死を迎えてしまいました。

 あれから4カ月―、今ウトナイ湖には北方の繁殖地を目指す水鳥たちが続々と集結しています。もしオオヒシクイが生きていたら、この中で仲間たちと過ごしていたのでしょうか。それがかなわなかったことを思うと無念で仕方ありません。ですが、前例のなかった本種片足での自然復帰の可能性を示してくれたことは、この野生動物救護界にとって一つの希望をもたらしたのです。

(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)



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