特集

女子アイスホッケー日本代表 平昌へ

(中)体力強化 運動量で圧倒

(2017年 2/16)
山中監督の話に耳を傾ける(左から)米山、大澤ら=強化合宿の様子から

山中監督の話に耳を傾ける(左から)米山、大澤ら=強化合宿の様子から

 ■肉体改造

 「5秒前…、3、2、1、ピー!」―。リンク上で笛が鳴り響くと、選手たちがブルーラインとセンターラインの間の短い距離のダッシュ、ストップを次の笛が鳴るまで繰り返す。30~40秒ほどで終わるが、また1分もたたないうちにスタッフの合図で再びスケーティングが始まる。初夏の7月から7カ月の間、合宿期間中によく見るお決まりの光景だ。

 夏場のある時は練習時間の半分近くをスケーティングに割き、試合直後でも相手チームがベンチを引き揚げた後、選手たちはブルーライン上に並んでラインダッシュのインターバル。肩で息をする選手たちに追い打ちを掛けるように、とことん背中を押し続けた。

 陸上トレーニングでも懸垂や垂直跳び、シャトルランなどを合宿のたびに敢行。毎回数値を測り、「(翌月の合宿までに)体力測定の数値を上げてくるように言っている」と山中武司監督(46)。これまで代表の常連だった選手でもこの数字が落ちれば危機感を促し、個々の競争心をあおった。指揮官ならではの愛のムチだった。

 厳しいトレーニングを課すのには、理由があった。昨春の世界選手権では、大柄な選手が多い海外の選手とぶつかることで体力を削り取られ、エネルギーを消耗した観があった。立ち上がりは同等か、それ以上に渡り合っても、最後で覆された。苫小牧出身のFW久保英恵(34)=西武プリンセスラビッツ=は「試合後半になって、攻め込まれる時間が多かったのが、世界選手権。体力さえ付けば戦っていける」とフィジカルの弱さを素直に受け入れ、トレーニングに精を出した。

 「試合プラスαで考えている」山中監督に一切の妥協はなかった。五輪最終予選前の合宿でも1月いっぱいはハードに選手たちの体を追い込み、試合の時はあえて疲労がピークの状態で臨ませた。最終予選の3試合、いずれも勝負どころの第3ピリオドに攻め込まれる時間帯で相手に失点を与えず、逆に駄目押しの一撃を加えた。そこには紛れもなく、敵国に勝るスタミナと運動量が備わっていた。

 ■コミュニケーション

 「チームがどうしたらよくなるのか」―。主将のFW大澤ちほ(25)=道路建設ペリグリン=は考え、たどり着いた答えが「コミュニケーション」だった。昨春の世界選手権、チームはなかなか浮上のきっかけをつかめず、チームワークも崩れ気味だった。「チーム内のコミュニケーションが足りない」と気付いたときにはもう遅かった。

 同じ失敗を繰り返すまいと以降、選手同士の対話を重要視した。大澤主将自ら選手たちに声を掛け、同年代や同じ所属チームではなく、「なるべく違うチームの選手や年齢の違う選手と話をするように」呼び掛けた。特に合宿がなく離れている間は、携帯電話でメールや写真を送るなど他のチームの選手とのつながりを意識するようにしてきた。

 また合宿期間中は大澤主将をはじめ、FW米山知奈(25)=同=、苫小牧出身のDF鈴木世奈(25)=トロント・フューリーズ(カナダ)=の両副将に、最年長のFW小野粧子(35)=フルタイムシステム御影グレッズ=と若手のDF床亜矢可(22)=西武プリンセスラビッツ=の5人でなる「リーダーズグループ」が選手間の意見をまとめ、スタッフに要求することも。山中監督もこの意見を積極的に取り入れた。「例えば『試合前なので雰囲気を盛り上げたい』と言う時には楽しいメニューに切り替えたり」と練習内容を変えることも少なくなかったという。

 山中監督は「リーダーズグループの方から気になることがあれば、私に要求してくるし、協力できることは取り入れるようにしていた。お互いにモヤモヤしたものは残したくなかったから」と説明。選手同士、選手とスタッフが考えを一致させ、チームが確実に一つの方向に向いていた。



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