特集

女子アイスホッケー日本代表 平昌へ

(上)世界選手権降格で危機感

(2017年 2/15)
五輪出場を決め、リンク上で輪をつくるスマイルジャパンのメンバー=12日、苫小牧市の白鳥王子アイスアリーナ

五輪出場を決め、リンク上で輪をつくるスマイルジャパンのメンバー=12日、苫小牧市の白鳥王子アイスアリーナ

 12日、苫小牧白鳥王子アイスアリーナ。試合終了のブザーが鳴ると、氷上、そしてベンチからゴールに選手が集まり、歓喜の輪ができた。女子アイスホッケー日本代表「スマイルジャパン」が、2大会連続五輪出場を果たした瞬間だ。1勝もできなかった2014年ソチ五輪のリベンジをするため、再び夢舞台へ立つ。

 ■異例の監督交代

 昨年4月上旬、チームはどん底にいた。トップディビジョン(1部相当)の昇降格を繰り返していた10年以前に戻ったような感覚があった。今回、副主将を務めたFW米山知奈(25)=道路建設ペリグリン=が「このままでは予選に向かっていけないな、という思いがあった」と不完全燃焼だった当時の心境を振り返っている。6月に候補選手を集めてスタートしたシーズン最初の合宿でも、選手たちの動きはどこかいまひとつ。「降格という事実。ダメージは大きかった」(日本アイスホッケー連盟関係者)。五輪最終予選まで8カ月を切っていた。

 「今のままではまずいのでは」―。昨年7月、同連盟が危機感を持って動きだした。当時のスタッフ、方針を一新し、そこで指名されたのが、14年までアジアリーグの王子イーグルスで指揮を執った経験を持つ苫小牧出身の山中武司氏(46)だ。1998年長野五輪の日本代表で、王子の監督としては4季連続のレギュラーリーグ1位、11―12シーズンのアジア制覇に導いた手腕に、日本の女子アイスホッケーの未来を託しての決断だった。

 これを快諾した山中氏だが、葛藤がなかったわけではない。当時、男子フル代表のコーチを務め、男子も五輪最終予選(昨年9月、ラトビア)を間近に控えていた。「グレッグ(・トムソン)=前日本代表監督=と(鈴木)貴人=現日本代表監督=と高い世界を目指したいという部分はあった。しかし監督となる以上、男子を離れなければならない。女子アイスホッケーのために力を発揮したい」と腹をくくった。

 ■堅守確立

 DF出身の山中監督が手初めに着手したのは、日本の持ち味でもある守りで選手たちの自信を取り戻すことだった。直後のフランス遠征では、欧州の強豪国相手に各試合「2失点以下」、被シュート数「25本以下」を課し、実行させた。

 FWはバックチェックを、DFは下がらない守りをそれぞれ徹底し、時にはパックに対し、身を投げ出してシュートをブロックする―。この結果、世界選手権3戦全敗だったスイスに2戦2勝を含む6戦全勝。結果を残したことで、選手たちが少しずつ自信を取り戻していった。反則で数的不利なキルプレーなど体を張った守りでチームに貢献したFW岩原知美(29)=西武プリンセスラビッツ=は「自分の長所をもう一度教えてくれた。スティックの置く位置だったり、いろんな細かいことを。ホッケーってすごいなって」改めて感じたという。

 徐々にハードルを高くした今回の最終予選では被シュート数を「15本以下」に設定。最後のドイツ戦、第2ピリオド終了時点で被シュート数が11本だったことを受けると、山中監督は「あと4本しか打たれちゃ駄目だよ」とさらにハッパを掛けた。残り20分、選手たちはさらに集中力を研ぎ澄ませ、それをクリア。指揮官は「体を張って守ってくれた選手たちを誇りに思う」と称賛を惜しまなかった。

    ×   ×

 女子アイスホッケー日本代表「スマイルジャパン」が、韓国平昌五輪最終予選(12日まで、苫小牧白鳥王子アイスアリーナ)を勝ち抜き、1年後の本戦出場権を獲得した。昨春の世界選手権での5戦全敗、トップディビジョン降格という現実から見事カムバック。夢舞台への扉をこじ開けた。前回ソチ五輪からここまで歩んだ代表チームの軌跡を追った。(3回連載)



PAGE TOP