特集

貧困と向き合う 苫小牧の支援者たち

(5)苫小牧市生活困窮者自立相談員 山吹 健司さん(40)

(2017年 1/11)
「役所だからこその支援ができれば」と山吹さん

「役所だからこその支援ができれば」と山吹さん

 「生活費は全然足りない。工場の正規職員の仕事を薦められたけど、給与が安いので迷ってる」

 「転職するなら、少し貯金してからの方がいいかもね」

 昨年12月中旬、苫小牧市役所1階の総合福祉課に設けられている生活困窮者の支援窓口。市内在住の20代女性が近況報告のため、訪ねてきた時のやり取り。女性は現在、サービス業のアルバイト従業員をしている。2年ほど前、職を求めて苫小牧に引っ越してきたがその時は仕事が決まっていなかった上、貯金も底を突いていた。

 職探しへ、女性と一緒に自転車でハローワークに通ったり、アルバイトの面接に向けて履歴書の内容を一緒に考えたりしてきた。自宅から仕事先への道のりを共に歩き、どのくらいの時間がかかるのかも確認した。

 「若いうちは分からないことだらけ。頼る親も大人もいないから、本当に困ったときには山吹さんが助けてくれる」という女性の言葉に照れ笑いしながらも、時に友人のように、時には親のように女性のことを心配する。

 「支援というよりも、一緒に悩んだり、考えたりし笑い飛ばしたりもする。正論では片付けられないことも多いからこそ、人と人との関わりを大事にしたい」

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 福祉の道を志し、児童養護施設で児童指導員として多くの子どもたちと接してきた。「頼る親もなく施設を出たらもっと大変な境遇にさらされる。入所するまでにもつらい思いをしてきているので、さらにつらい思いをする前に何か支援できることはないか」。そんな思いから市職員となった。

 2015年4月、市福祉部に開設された生活相談窓口で社会福祉士の資格や経験を生かし、相談員としてさまざまな市民の悩みに対応する。一口に困窮者と言っても、相談内容は十人十色。病気で働けなくなり、生活が行き詰まった、わずかな年金で病院にも行けない、人との関わりが苦手で仕事が長く続かない、働きたいのに仕事が決まらない…。目に見える問題にとどまらず、心の内に抱える問題にも寄り添い続ける。

 「引きこもりの人も働かなきゃいけないことぐらい分かってる」。でも働けない。正論だけがサポートではない。ほんの一瞬顔を出す意欲を逃がさずキャッチすることが、次の一歩につながる。そこが専門職に求められていることだと思っている。

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 誰もが人生をより良く生きたいはずなのに、思うようにいかない。ささいなつまずきから自信を失い、人との接触も少なくなって孤立する。最後はどんなに困っていても、「助けて」と声を上げることすらできなくなる。声を上げるすべを知らない人をどう見つけ出し、サポートしていくかが今後の課題と考える。

 既存の制度だけでは支え切れない問題を抱える人も多い。そして、困窮は突然やってくる。「各種支援制度に該当しない人をどう支援していくかが、生活困窮者自立支援法の本当の役割ではないか。行政として、できることはまだまだあるはずだ」

(完戸雅美)



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