特集

貧困と向き合う 苫小牧の支援者たち

(4)こども食堂開設目指す「木と風の香り」代表・辻川 恵美さん(36)

(2017年 1/10)
今年6月に自宅でこども食堂を始める計画の辻川さん。「食事は心も満たし、人とのつながりも生み出す」と語る

今年6月に自宅でこども食堂を始める計画の辻川さん。「食事は心も満たし、人とのつながりも生み出す」と語る

 「遊ぼう」

 3年ほど前の春先のある日、娘を遊びに誘うため、家を訪ねてきた幼いきょうだいの姿にショックを受けた。小雪と寒風にさらされた5歳の姉の手は氷のように冷え切り、1歳の弟は顔中が鼻水まみれ。話を聞くと姉は親から弟の世話を任され、日中は2人だけで公園で過ごしているという。

 娘は学校に行っていて不在だったが、どうしてもそのまま帰すことができず、招き入れて塩おにぎりを食べさせた。大人の助けが必要な子供がいる。この出来事をきっかけに昨年6月、地域の子供に食事を無料で提供する「こども食堂」の開設を決意。同年秋には運営を手掛ける市民団体も発足させた。「子供たちが安心して集まれる隠れ家のような場所にしたい」。柔和な笑顔の中に、意志の強さがにじむ。

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 神奈川県出身。夫と、1歳から小学6年生までの1男3女との6人家族。3年前から苫小牧市音羽町の一軒家で暮らしている。娘や息子と遊ぶために自宅にやって来る子供たちと関わっていくうちさまざまな事に気が付いた。布地がすり切れて穴の開いた同じ服を毎日着ている子。3食まともに食べていないと屈託なく話す子。手入れされていない長い髪をいつも無造作に垂らしている子。親が2日間も帰ってきていないと明かす子もいた。理由はいろいろあるにせよ、わが子に十分目を向けられない親が少なくない社会の現状を垣間見た気がした。

 自分もかつてシングルマザーとして家事や育児、仕事を一人でこなしたことがあり、日々の生活に必死な親側の事情も分かる。一方で、寂しさを抱える子供たちを身近にすると、何か少しでも力になりたいと思った。

 「普通の主婦である自分に子供たちのためにできることはあるのだろうか」。自問自答を繰り返す日々。身を震わせる幼いきょうだいのために心を込めて塩おにぎりを握ったあの日、自分が進む道が見えてきた。「食事はおなかだけではなく心も満たし、人とのつながりをも生み出す」。そう信じて自宅の庭にある物置小屋を改築し、こども食堂を開くことにした。

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 準備期間は1年間とし、スタートは今年6月に決定。仲間も次々と集まり、昨年秋には市民団体「木と風の香り」を立ち上げた。設立資金を集めるための募金活動やフリーマーケットの開催、フードバンクとまこまいと共催の「地域食堂」実施など、準備は本格化している。

 子供の頃からぼんやりとではあるが、誰もがいつでも集まれる「居場所」をつくりたいと考えていた。成長とともにその気持ちは強まり、大人になっても「おなかがすいたとき、悲しいとき、死んでしまいたいときなど、どんなときも頼れ、受け入れてもらえるセーフティーネットのような場所をつくりたい」という思いが頭を離れなかった。

 その思いが今、こども食堂という具体的な形で実現に向かおうとしている。「経済的な困窮だけではなく、親との関わりが薄く寂しい食生活を送っている子など、さまざまな面で貧困に苦しむ子供がここで笑顔になってくれれば」

(姉歯百合子)



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