特集

被災地の光と影-東日本大震災から4年

(4)宮城県石巻市

(2015年 3/6)
壊れた天井の下で生活を余儀なくされている佐藤さん

壊れた天井の下で生活を余儀なくされている佐藤さん

在宅被災者への支援を訴えるチーム王冠の伊藤さん

在宅被災者への支援を訴えるチーム王冠の伊藤さん

 5日、宮城県石巻市で「在宅被災者」の取材を続け、沿岸から数キロ内陸に入った針岡集落を訪ねた。取材に応じてくれた佐藤与次郎さん(84)は「ぼろぼろの家だけど、ゆっくりしていって」と笑顔で自宅に招き入れてくれた。

 現在、1人暮らしをしている佐藤さんの自宅内は、壊れた屋根からの雨漏りによって腐った天井が落ち、床も抜けそうなほどで、太陽が差し込む縁側の窓はゆがみ、施錠もできない状況だった。「全部直すったら1000万円は掛かるって言われてさ。でも、もうこんな歳だから、大金を掛けて家を直してもね」と住宅修繕はほぼ諦めている。

 針岡集落は、川を揺れ、さかのぼってきた津波をかぶって水没。震災当日、偶然自宅にいなかった佐藤さんは、数日後に船で何とか自宅に戻ったが自宅は損壊。震災から1カ月後、電気も復旧しない中、自宅の修繕をしながら生活再建を始めた。行政からの再建費用127万円と自己負担200万円ほどで屋根や寝室の壁、玄関などを修繕。雨漏りで腐った天井や床までは直せていない。佐藤さんは「床の湿気が抜け切らないから、たわんだ床がいつ落ちるかと不安だよ」と不自由な生活の実態を訴えた。

 不便な生活を強いられながらも、この集落を離れるつもりはない。住宅が直せず、子供を頼って引っ越ししていった近所の仲間も多く「少しずつ、話をする友達もいなくなって寂しい」と日々感じつつも、佐藤さんにとって住み慣れた自宅は「ついの住み家」なのだ。

■   ■

 こうした在宅被災者を支援しているNPO法人チーム王冠の調査によると、石巻市だけでも在宅被災者は1万2000世帯(推計)に上るという。代表の伊藤健哉さん(48)は「在宅被災者は、行政から被災者としてみなされず、震災直後でも当面の食事の支給もままならず、住宅再建も最大で152万円の助成だけで生活再建を強いられている」と話す。避難所では、津波で家ごと流された被災世帯の避難が優先され、食料もない中、自宅での避難生活を強いられた被災者は多い。

 在宅被災者が行政支援を求めて声を上げない理由について伊藤さんは「自分よりも津波で家を流された人の方がかわいそうという気持ちも大きいし、自宅を直せないでいることが恥ずかしいと思っている高齢者も多い」と指摘。取材に応じた在宅被災者たちの話を聞くと、時間の流れとともに、損壊した自宅での生活への慣れや修繕費を捻出できない現実を受け入れざるを得ない状況に追い込まれていることが分かる。「在宅被災者は、困っているのに困っていると言えないサイレントマジョリティー(声なき声、物言わぬ大衆)なんです」

 チーム王冠が名簿化した支援世帯は5000世帯。限られた人数で支援可能な世帯数にも限界があり、把握できていない在宅被災者も残っているという。「支援を始めたころは、行政も混乱していたため、いずれ支援してくれると思っていたが、災害対策基本法では在宅は被災者として認識されていないので、行政は今も調査すらしていない」と伊藤さんは行政対応に憤る。町内会も解散してしまい、地域の目が行き届かず、行政の情報すら伝わっていない。いろんな要素が絡み合って在宅問題が表面化しにくくなっているようだ。

 初めて知る在宅被災者という現実。全国から届けられた物資ですら「被災者じゃない」と行き渡らなかったこと、医療費免除も受けられず、心身ともに不安定なまま、損壊住宅で暮らす被災者たちにとっての復興は始まっていない。取材の最後に、伊藤さんは「マスコミは仮設住宅ばかり取り上げているけど、在宅被災者の現状も問題として取り上げてほしい。だって同じ被災者なんですよ」と切実に訴えた。

     (完戸 雅美)

       =おわり=



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